第八話
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まりは十年位前の話よ」
そう言って、幽香は過去の話を始めた。
十年ほど前、太陽の畑ではいつもどおりの風景が広がっていた。
花の妖怪風見幽香は、この日もいつもどおりの花に囲まれた生活を送っていた。
「おはよう。今日も元気そうで何よりね」
向日葵のいい香りと景色に囲まれ、幽香はとてもご満悦のようだ。
そんな中、ある向日葵の茎に、白くにごったようなあとがついていた。しかも、その向日葵だけこころなしか元気がないように見える。
「……病気かしら」
幽香はそっと茎を触ると、そのにごったあとの部分に何かを伝えていく。すると、あとはきれさっぱりなくなり、元気がないように見えていた向日葵も、元気を取り戻していた。
「これでいいわ……?」
ふと聞き耳をたてると、何か付近で声がしていた。人数からして二人。男の声だった。
「……」
何かを感じた幽香は、ゆっくりとその声がするほうに歩いていった。
「おとなしくついて来い!!」
「…っ!!」
向日葵畑に囲まれた道を、男二人が少女を引っ張りながら歩いていた。
少女は泣きながらも必死に抵抗しているようだが、大人の男相手にか勝てるわけがない。なすすべもなくずるずると引っ張られていった。
「けどさあ、こいつほんとに金になんの?」
「さあな。うわさじゃあ、こいつは人の病を治す能力があるらしいぜ?」
「病を治すかぁ。俺ら一般人にはまったくわからんからなぁ」
「というわけだ。お譲ちゃんには悪いが金になってもらうさ!」
そう言って男は悪人のような笑い声を上げていた。
すぐそばの向日葵畑で、誰かがこっちを見ていたにもかかわらず。
「お金のために人攫い? 最近の人間はどこまで落ちぶれたのかしら……」
「誰だ!?」
そういって男達の前に現れたのは、チェックの服を着た花の妖怪だった。
「お前は……」
「何大声でしゃべってるんだか? 丸聞こえだったわよ?」
「おいやべえよ……こいつ花の妖怪『風見幽香』だろ?」
「だからなんだってんだ? 俺達に残された道は、こいつを始末するだろうが!」
そういうと、男はいきなり幽香に殴りかかった。
不意をついた攻撃だが、幽香はまったく動じない。それどころか、軽く相手をにらんでいた。
「!?」
男の拳が幽香の顔の目の前まで飛んできた瞬間、幽香は音を立てずに男の目の前から消え去った。拳はそのまま空を切っていく。
何が起きたかわからずきょとんとする男だったが、我に帰ると急にあたりをきょろきょ
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