第六章
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第六章
「そういうことですね」
「その通りだ。そうしたサイコ殺人だな」
こうした場合の事件の呼び名だ。今がそれだった。
「それになる」
「サイコ殺人は人の中にあってこそ起こる」
「そうした意味ではどの殺人事件も同じだな」
「ですね。殺人は人がいるからこそ起こる」
自明の理であった。殺人は相手があってこそである。聖書のカインとアベルの例を見るまでもない。誰もいなければそんな事件は起きないのだ。
「そういうことだ」
「ええ、それでああいう奴もですか」
「出てしまう」
また話す役だった。
「異常者もいるのがこの世の常だ」
「この世の」
「そうなる。私達がいつも相手にしている」
「ええ、化け物連中とはまた勝手が違いますね」
本郷の顔が曇っていた。こうした話をしていると自然に、であった。
「何か。嫌な感じがありますね」
「嫌か」
「連中よりグロテスクな性格はしています」
前迫ではない。そうした殺人鬼全体を指し示しての言葉だ。
「皮だけは人間ですがね」
「皮だけはか」
「だから余計になんですよ。嫌な気持ちになります」
人間の姿だからである。それをだというのだ。
「中身が化け物よりも醜い場合もあるから余計に」
「こう考えるといい」
ここで役はまた話した。
「心を見ればいい」
「心をですか」
「そうだ、心をだ」
こう本郷に話す。今はラーメンのスープをレンゲですくってそのうえで口の中に入れている。あっさりとした京都らしい味のスープだ。
「心を見るのだ」
「心をねえ」
「見ればわかる。外見はどうとでもなる」
「ええ、あの女は」
本郷はここでだ。前迫に話を戻して述べた。
「あれですね。心があまりにも醜かった」
「外見はどうでもよくなるな」
「はい、俺は最初からそう言ってましたっけ」
「言っていた、そうなる」
「わかりました、っていうかあらためて気付きました」
こう述べる本郷だった。
「そういうことですね」
「そうなる。それではだ」
「ええ、事件は終わりました」
本郷はあっさりとした声で言い切った。
「じゃあ今からは」
「どうする?」
「食べますか」
今言うのはこのことだった。
「ラーメンを」
「そうだな。何はともあれ事件は終わった」
役も彼のその言葉に頷く。
「それならな」
「はい、それじゃあ」
本郷はここで自分のラーメンを食べ終えた。そのうえでだ。
「ウォーミングアップも済みましたし」
「一杯目だったのか」
「そうですよ。ここからが本番ですよ」
笑いながら役に言うのであった。
「これからですよ」
「それで何を食べるつもりだ」
「あれですよ」
笑いながら店の壁を指差す。そこにはだ。
特大ラーメンとあった。巨大な
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