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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
銀の戦騎vs青き槍兵 ─解放されし宝具─
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のだと。





「────ああ、わかった。なんだ、つまんねぇ話をさせちまったな、悪かった。
 うちのマスターにはまたグチグチ言われるんだろうが、そんなこたぁどうでもいいことだったぜ」

 疑問は一切解けていない。
 彼女、フェンサーの正体については何も明らかになっていないと言うのに。

 ランサーは、このまま戦うことを決めた。

「ここまで魅せてもらったんだ。我が槍の返礼を受け取れ、フェンサー」

 ギシリ、と。

 朱の槍を持つランサーの魔力が脈動する。



 一分たりと、油断も加減もない。

 十メートルは離れた距離から更に距離を取る。
 一息にてまた十メートルを跳んだランサーとフェンサーの距離は、凡そ二十メートル。

 周囲の大気が凍り付く。
 槍に込められた殺意が陽炎のように、朱い魔力と共に立ち昇る。
 軋みをあげているような空間にありながら、フェンサーはただ銀の剣を構えていた。

「いいの? それだけの傷を負って、尚且つ制約まである状態(・・・・・・・・)の今の貴方じゃ…………負けるわよ?」
「仕方ねぇさ。これが今の俺の全力だ。それに……撤退しても素直に逃がしてくれそうもねぇ」

 ニヤリと笑う。
 危機にあることが嬉しいかのように、ランサーは笑みを浮かべていた。

 絶対に速度を上回られるこの状況で、撤退など出来ようはずもない。

 剣の間合いどころか、卓越した魔術までも使いこなす敵手。
 ここに勝機を、生き延びる可能性を実現させるなら、真名を解放した宝具の撃ち合い以外に手段はない。

 通常であれば生き延びること、守りや退却することにおいてランサーは優れた技能を持つ。
 だがフェンサーの宝具が持つ絶対速度の概念が、事此処に至ってはランサーの長所を潰していた。



『全てのサーヴァントと戦い、生き延びて戻れ』



 令呪の縛りによるその命を遂行しなければ、ランサーにはペナルティが課せられる。
 これまでは手加減や様子見によって、本気の戦闘(・・・・・)を避けてきたランサーだが、フェンサー相手にはそうはいかなかった。

 最初の体たらくぶりから相手を侮り、仮にもサーヴァントであるフェンサーを嘗めていたせいで軽くはない傷を負う羽目になった。

 青き槍兵の象徴たる宝具は、通常ならば必ず心臓を貫くという呪いの槍として真名解放をする。

 ここでフェンサーを倒すことは可能だ。
 因果を逆転させ、先に心臓を貫くという結果を作り上げる魔槍。
 その槍を放つ以上、防衛宝具を持たないであろうフェンサーにコレを躱す手段はない。

 けれど彼女と宝具を撃ち合った場合、必ず心臓を貫く代わりに先にこの身を烈断されることを理解していた。
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