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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
銀の戦騎vs青き槍兵 ─解放されし宝具─
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力負けする相手では先手を取ろうと打ち負けるので使い方が限られる。
キャスターやアーチャーは接近しにくいのもあるが、遠距離からその場で強力な魔術なり宝具を撃ち放ってくる彼らには、速度のアドバンテージ自体が得られない。
相手の速度を上回る形で補正を受けるこの概念は、戦闘に速度を求めない相手だと無効化されるに等しいのだ。
といっても宝具の真価は付加効力ではなく、真名解放にあるのだが。
「答えろ。貴様、何処の英雄だ。いや────本来は、何のサーヴァントとして呼ばれる身だ」
「貴方も言ってたじゃない。私は、フェンサーよ」
「戯れ言を。聖杯が喚んだのならたとえ例外であろうと、参加者である俺たちは納得はするさ。しかし貴様はあまりに不可解だ」
ランサーが抱く疑問は当然だろう。
最上級の宝具を持ち、剣術に長けながらも儀礼呪法に匹敵する大魔術を二重発動、しかもただの一言でそれを成す。
数多いる英霊の中には、全ての分野に優れた英雄も存在するだろう。
けれどこの聖杯戦争で英霊をサーヴァントとして召喚するにあたり、彼らはそれぞれ決められたクラスという匣を用意され、その役割に応じて喚び出される。
多才な能力を持つ英霊であっても、その役割の埒外にある能力は行使できなくなるのが普通だ。
その代わりとして、彼らは役割に準じた固有能力を付加されたり、元々の能力を強化されたりする。
フェンサーはそのサーヴァントの在り方を逸脱している。
彼女には彼女だけの制約があるのかもしれないが、それを取ってみてもフェンサーはサーヴァントとして異質だった。
「私はね。喚び出されるなら、何にでもなるわ。剣にも、弓にも、槍にも、術にも。
騎乗兵にだってなる。暗殺者にだってなる。
私を喚ぶマスターが望むのなら────私は、狂気にだって身を委ねる」
フェンサーの答えは、愚昧の一言に尽きた。
ルールの中に存在するくせに、そのルールを守っていないというのだから。
けれど、何故だろうか。
切実さを含んだようなその言葉を、嘘だとも偽りだとも思えない。
「だからね。私はフェンサーでいいの。何の役割を求められようと、マスターと共に戦う者であることに変わりはないんだから」
それは確固たる意志。純粋なる決意。
それこそを彼女の在り方、誇りだと感じたからこそ、ランサーはこの謎のサーヴァントへの疑問追求を自身の胸中に埋めてしまった。
聖杯は彼女を呼び出した。彼女のマスターにも令呪は与えられた。
なら俺たちは敵同士、殺し合うだけの関係だ。
己が何者であるかを問う以前に。
ただ互いに戦士であると言うのなら、この少女と自分との間に余計な疑問など不要だった
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