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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
銀の戦騎vs青き槍兵 ─解放されし宝具─
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難なくそれを剣で弾くも、ランサーは反撃を許さない。
 それだけで鉄をも貫くだろう刺突の連打が、驟雨の如くフェンサーに打ち付ける。

 どれもが急所を狙う必殺撃。
 剣で軌道を逸らし、弾き続けるもその雨が止むことはない。

 今は何とか防ぎきれているが、いずれはその槍がフェンサーの身を穿つ。
 事実、徐々に加速する突きは軌道を逸らせてはいるものの、僅かずつにも身体に傷を残していく。



 掠り傷が擦り傷に。
 
 擦り傷が切り傷に。

 切り傷が裂傷へと。



 ただ武器の応酬をしているだけ。
 だというのに彼女の外套は血に塗れていく。

 このままでは、勝敗は火を見るより明らかだ。

 都合六十八度目の突きを放った後、ランサーは自ら攻撃の手を止めた。

「なんだオマエ。やる気あんのか?」
「あら、お気に召さない?」
「ったりめぇだろ。手の内隠すのもいいが、それで死んだら意味ねぇぞ」
「そう。なら、少し本気を出してあげる」

 傷を顧みることもなく、呼吸すら乱さず、フェンサーは微笑を浮かべていた。

 この程度の痛苦、気にするほどのことではないと。

 静かに、瞑想するように、目を閉じて深呼吸。

 囁くように唱える呪文(ことば)は、自身への暗示であるとともに己一人だけのモノ。
 各々の魔術師が自己形式で設定する、千差万別、唯一無二の詠唱だ。

 彼女は、それを口にする。

set(起動)……EtherDrive(魔術廻炉)──」

 普段は欧州言語での魔術を行使する彼女が発したのは、英語で形成された詠唱。
 組み上げられる術式は、彼女の内で魔術回路と魔術刻印を接続し、固有魔術を発動する準備。

 詠唱をしてから数秒。
 フェンサーの両腕に乱雑な紋様の光が浮かび上がる。

 手首から肩口にまで刻まれた凄絶なる魔術刻印。
 それは外套の上からでも分かるほど、強い緑光を灯していた。

 発動する魔術。銀光の剣に注がれていく魔力。
 ここに宝具は解放され、フェンサーが己の真価を見せる。

聖遺物・概念実装(ミスティック・ディヴァイナー)────!!」

 目を眩ませるほどの極光。

 一瞬の光。

 フェンサーの手には、それまで不可視だった白銀の宝剣が握られていた。

「貴様……その宝具は…………!」
「さすがは光の御子さま、知ってるのね。貴方ならこの剣がどういうものか、わかるわよね?」

 いつの間にランサーの正体を看破したのか、フェンサーはからかうように告げる。
 剣を覆い隠していた銀光は移り変わったかのように、今は彼女の腕を覆っている。

 それはまるで、銀の腕のように。

「……ありえん。それは銀の腕
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