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東方虚空伝
第二章   [ 神 鳴 ]
十九話 祟り神の憂鬱
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「ブー分かったですー。じゃぁ紫ちゃんも私と一緒に行くですー!」

 早希の台詞を聞いた瞬間、紫はスキマを開き飛び込んでいた。

「あー!何で逃げるんですー!何処に行ったんですー!」

 早希は楓の襟首を掴むと引きずりながら走り去っていった。

「まったくあの子は」

「アハハハ、まぁいいじゃないお祭りなんだし」

「…そうだね」

 そう言うと諏訪子は僕の隣に腰を下ろす。

「で?虚空はこんな所で何してんのさ?」

「ちょっとね、平和について考えていたんだ」

 遠い目をしながらそう答える。

「何馬鹿なこと言ってんだか」

「正直に言えばやる事無いからぼ〜っとしてた」

「やる事無いって…あんたも一緒に飲めばいいのに」

 諏訪子とそんなやり取りをしていると、

「諏訪子様ー!七枷様ー!そんな所にいないで一緒に飲みましょー!」

 町の住民達からの誘いの声が掛かった。

「だってさ、ほら行くよ虚空。あんたも飲むの」

「誘われて断る訳にもいかないよね。じゃぁ行こうか」

 諏訪子に手を引かれて住民達の輪に加わった。僕も諏訪子も次々に酌を受けながら彼らとの会話に華を咲かせる。
 そして祭りは夜更けまで続くのであった。




□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■




 翌朝。

「う〜んう〜ん、頭痛いー気持ち悪いーあーうーあーうー……」

 布団の中で呻き声をあげる諏訪子。ものの見事に二日酔いになっていた。

「大丈夫かい、諏訪子?」

 諏訪子の額に濡れタオルをかけながら聞いてみる。

「すまないね〜、あたしがこんな身体じゃなかったら……」

「それは言いっこ無しだよ、おとっつぁん」

「そこはおっかさんでいいでしょ!ってあーうー無駄にツッコませないでよ〜…」

「ごめんごめん。じゃぁ僕は何か軽い物を作ってくるから後お願いね紫」

 僕がそう言うとスキマから紫が出てきた。

「うん分かったわ。諏訪子〜大丈夫♪」

 ユサユサと諏訪子の身体を揺する。

「あーうー!紫〜や〜め〜て〜!揺らさないで〜!し〜ぬ〜!」

 じゃれ合う二人を残し台所に向かう。その途中でなにやら悲鳴の様な声が聞こえてきた。声の元を探してみると、

「楓様〜大丈夫です〜♪何でも言ってくださいですー♪」

 ユサユサとイイ笑顔で寝込んでいる楓の体を揺さぶる早希。

「さ、早希!あなた憶えておきなさいよ!うっぷ…お願い止めて〜…」

 ちなみに楓も案の定と言うか二日酔いになっていた。

「こら早希、あんまり悪戯しないように」

「…するな、とは言ってくれないのですか?」
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