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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第二話 囚われの……
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言葉を否定するように、シルフィードは立ち上がると歩き出した。歩きだしたシルフィードは、タバサの目の前で立ち止まると、自分よりも遥かに小さな主を見下ろした。
 
「……何時ものように、あなたは空」

 睨み付けるように自分の使い魔を見つめるタバサ。しかし、シルフィードは視線を逸らすことはない。
 シルフィードは分かっていた。
 自分の主が今、一体どんな状況に陥っているのかということを。
 自分の主が王家を裏切ったことにより、母親が人質に取られ、投降を促されており、もし投降すれば殺されるだけであり。だから、主は投降することなく、戦ってでも母親を奪い返すつもりだということを。
 だが、そんなことは相手も予想しているということも、シルフィードは分かっていた。
 
 王家が今までタバサに命の危険がある任務を命じていたのは、理由があった。
 それは、タバサを父親のオルレアン公と同じように謀殺した場合、旧オルレアン公派が何をしでかすか分からないためだ。そのため、これまでは、命の危険がある任務を命じることで、何とか処分しようとしていたのだが、しかしタバサは命じられた全ての任務から生き残ってきた。
 そのことに対し、歯噛みするものは多かった……だが、今回の件で、彼らは大手を振ってタバサを殺す機会を得た。
 こんなチャンスを彼らが逃す筈はない。
 王家は今まで、自分たちが必殺の思いで命じてきた任務をくぐり抜けてきたタバサの実力を知っている。
 そんなタバサを確実に殺すためのものが、この屋敷に必ず仕掛けられているだろうことを、シルフィードは感じていた。
 人か罠か……それとも別の何かか……。
 屋敷から漂ってくる冷たい気配に、シルフィードは自分の全身を覆う鱗がささくれ立つ気がした。

「ついてきてはだめ」

 見つめ合う主と使い魔。
 最初に目を逸らしたのは、主であるタバサであった。
 心配気に見つめてくる自分の使い魔の瞳から、逃げるように顔を逸らしたタバサは、シルフィードに背中を向ける。
 主に背中を向けられたシルフィードが、小さく「きゅい」と鳴く。

 実のところ、シルフィードは今までタバサが受けた様々な任務において、直接戦闘に参加したことはなく。あれこれと任務の手伝いをしたことはあったが、直接的な戦闘になる時は、必ず空の上で戦いが終わるまで待機していた。タバサに理由を問いただしても、『帰りの足がなくなるから』と言うだけであったが、シルフィードはその言葉を素直に信じるほど馬鹿では……馬鹿では……馬鹿ではなかっ……た?
 これまではそれで大丈夫だった。
 タバサはそこらのメイジが束でかかっても、涼しい顔で勝つことが出来る程の実力の持ち主だからだ。
 しかし、今回は違う。
 違い……過ぎた。
 今からタバサが立ち向かう
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