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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
Half Point
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界に捉える、ただそれだけのために生み出された存在です。……ですから、もうお会いすることはできないかもしれませんが、それでも、ずっとあなたを見ています。……カーディナルの目を盗むのも、もう限界です。ですが、ご安心ください。マサキさんを危険な目には遭わせません」

 次の瞬間、僅かにノイズが弱まったかと思うと、マサキの背後に巨大な穴が出現した。それは瞬く間に肥大化し、大きく開けた口でマサキを周囲の霧ごと一飲みにした。
 まるで電源を消したときのテレビ画面のように、プツリと光が途絶えた。

「……どうか、ご無事で……」

 最後の一筋の光が消える直前に響いた声が、マサキの中で何度もこだましていた。



「――っ!?」
「きゃあっ!?」

 目覚めを認識するよりも早く、マサキは跳ね起きた。焦点の定まらない視界はぼやけ、急に揺り動かされた頭が鈍痛を訴える。

 ――また、なのか……。
 マサキはいつまで経っても色あせようとしない苦い記憶を、口に溜まった同じ味の唾液と共に飲み下した。無意識に力が込められた奥歯が、ギリッと摩擦音を立てる。

「マサキ君……?」

 不意に、脇から声をかけられた。マサキがそちらに視線を投げると、そこには少々の困惑と驚きを滲ませながらこちらを覗くエミの顔。純白の肌と濡れ羽色の髪の素晴らしいコントラストを見せる愛らしい造形が、息遣いを感じられそうな距離に存在していた。
 彼女は数秒かけてくりくりとした瞳でこちらを覗き込むと、やがて安心したような笑みを浮かべて遠ざかった。

「よかった……。もう、大丈夫そうだね。マサキ君、いきなり倒れたからびっくりしちゃった。ここまで運んでくるの、結構大変だったんだよ? というか、実際にわたし一人じゃ出来なかったし」

 言われて、マサキは辺りを見回した。今自分が座っているのは、硬めのマットレスが敷かれた簡素なベッドの上。周囲に同じようなベッドがいくつか設置されている辺り、ここは会館の医務室か仮眠室だろうか。メニューウインドウからデジタル時計を呼び出すと、薄青いホログラフィックボードに16:30と映し出された。そこから推察するに、夢の世界へと旅立っていたのは約30分間のようだ。

 一通り状況を把握して視線をエミに戻すと、彼女は心配そうな顔色でこちらを覗っていた。

「見た感じは何ともなさそうだけど……、でもやっぱり何かあったら大変だし、今回の攻略は休んだほうがいいんじゃないかな? あ、報告とかはわたしが――」
「いいや、問題ない」
「……そう……。でも、無理はしないでね? ……あ、そうだ」

 マサキが提案を遮って言うと、エミは不安そうに眉を寄せたまま、渋々引き下がった。と思いきや、今度は何かを思い出したように胸の前で手を合わせると、「ちょっ
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