第十三話 〜大将着陣〜
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。
『...帯』
父さんの声。
それはいかにも申し訳なさそうな。
...なんで。
なんで父さんはいつも...。
『...すまない』
身体の奥底から湧き上がってくる。
...やめてよ。
何で父さんが謝るんだよ。
『またお前に辛い思いをさせた...』
違う。
僕はそんな風に弱々しい姿の父さんが見たくなくて...。
それは鉛のように鈍く、そして不味く。
『ははっ、こんなんじゃ父親失格だな...』
やめて。
やめてよ...。
重苦しく。
『本当に...』
やめて...。
そして。
『すまない』
やめろッ!!
パリンッ!
目を覚ました時父さん達がわざわざ僕の為に持ってきてくれた水の入った陶器の器。
朝に喧嘩別れしてからずっとこの部屋の机に放置されたままだったもの。
それが...。
『...ッ』
陶器独特の破砕音を出して父さんの足元に散らばった。
『はぁ...はぁ...』
そしてそこには陶器に残っていたであろう水が木の床を黒々と湿らせていた。
『...た、帯?』
『うるさいッ!!』
『...ッ!?』
さっきまで胸の辺りで渦巻いていた重苦しいものが肉体の隔たりを破り、一気に溢れ出すような感覚。
『何で!!』
頭でわかっていても止める術が思い浮かばない。
『何で...ッ!!』
堰を切ったように。
『何でいつもそうなんだよ!!』
全てが溢れ出す。
『何でいつもすぐ謝るんだよ!!』
あいつらに父さんはいつだってそうだ。
『父さんは悪く無いじゃんか!!悪いのは全部あいつらじゃんか!!』
さも当たり前のように頭を下げる僕の大好きな父さん。
『それなのに毎回毎回すみませんすみませんって!!何で父さんが謝らなきゃいけないんだ!!』
それが見ていて辛かった。
『そんなんだから!!』
父さんがそんなんだからあいつらは図に乗って。
『そんなんだから...ッ!』
父さんがそんなんだから子供の僕は肩身狭くて。
『そんなんだから...ッ』
父さんがそんなんだから。
『...父さんが』
『父さんが...辛い思いしなきゃいけないんだ...ッ!!』
顔の下に隈を作って笑顔が消えた。
そんな父さんを見るのが何より辛かった。
『うぁぁぁぁッ!!』
言葉というには余りにも脈絡もなく、そして纏まりのない言葉の羅列を吐き終わると今度はただただ涙と言葉にしきれなかった分の感情がそのまま声になって溢れてきた。
『ッ!?』
そしてそのまま父さんの胸元に飛び込む。
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