暁 〜小説投稿サイト〜
〜烈戦記〜
第十三話 〜大将着陣〜
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何故か。
そんな理由は思い浮かばなかった。

『うぐぅぅッうあぁぁぁ』

ただ泣きたかったから泣いた。

『...』

父さんは何も言わない。
このまま何も言わずに父さんの温もりを受けながら眠りにつけたらどれだけ幸せなのだろうか。
そして今までの事が全部嘘で目を覚ませば青空の下で僕と父さんと凱雲の三人で街を回って...。

ぽんっ

だが、突然頭に大きな手が優しく、だが跳ねるように乗せられた事によってその先の思考、もとい幸せな妄想は終わった。

『ふぅ...』

そしてその手の主は気の抜けるような息を吐くと。

『いやな...』

一つ言葉を溜めて。

『すまんなぁ、帯よ』

また謝った。

だが、怒りは湧かない。
何故か。
それは多分この数日間で聞いてきたどの謝罪の言葉とも違う、優しさがあったからだ。
そして僕はそれに動揺していた。

僕は顔を上げてその手と声の主の顔を覗く。
そしてその顔は。

『...ぁ、また謝ってしまったな。はははっ』

目の下に隈を作りながらも眉毛を八の字にしながら困り笑顔を作っていた。
それに僕はさらに酷く混乱した。
何故父さんは自分の息子にあそこまで言われ、そして泣かれたのにここまで飄々としているのか。
僕の中での父さんでは理解できなかった。

『...私はな』

そして僕が今だに答えを出し切れていないのにも関わらず父さんが口を開く。

『昔から普通だったんだ』

どうやら父さんの昔話のようだ。

『何をするにも中途半端でな。若い時には武芸を学ぶにも軍学を学ぶにも、政学から思想学、歴史学に至るまでどうにも目が出なくてな。そしてそれは歳を重ねても変わらずに同期の人間が出世なり落ちぶれるなりしてる中でただただ流されながら生きて働いて、そしていつの間にやら官士になっていて...』

それを話す父さんは困ったような、だが深刻そうには決して見えないというような何とも微妙な表情だった。

『そして、そんな人生の中で凱雲に出会った』

だが、そこで表情が変わる。

『あいつは凄いんだぞ?何をやらせても上手くやるし、頭はいいし、おまけに武芸と腕力にかけては敵う奴なんて何処にもいやしない!まったく対した奴だよ昔から』

その目はキラキラとしていて、さながら子供が自分の友達に新しいおもちゃや自分の夢を語る時のような目だった。

『...本当に...対した奴だよ。あいつは』

だが、一通り喋ると今度はさっきとは打って変わって表情が曇る。
その様子から父さんのその言葉の次があるとするならそれはきっと`私とは比べものにならないくらいに`とか言いそうな、そんな表情だ。

『あいつと出会ってからは全てが変わった。本当な
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