第十三話 〜大将着陣〜
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にはあまりに酷というものだ。
これは完全に情であるが、豪帯様は豪帯様で幼い頃から甘えるべき親から離れてずっと叔父の元に預けられて今までを過ごして来たのだ。
そう思うと積もる思いもあるだろうし、何よりその父を気遣って我儘を押し殺してきたのだから一言可哀想だというのがひっかかる。
『『凱雲!』』
『...』
二人の言葉が合わさる。
どうやら傍観者のつもりがいつの間にか両意見の決定打のような立ち位置になっていたようだ。
さて...どうしたものか。
義理と道理をとるか。
はたまた人情をとるか。
『私は...』
口を開く。
二人が更に私に集中する。
そしてその私の意見は...。
『私は豪統様の意見が正しいと思います』
『...ッ!』
『...』
豪統様を選んでいた。
当然といえば当然だ。
まず、主人である豪統様への義理を抜いたとしても道理を捻じ曲げる事はできない。
それに人情で言えばそれは豪統様にだって言える事だ。
子に子の悩みがあれば、その子の親にもまた親の悩みがあるものだ。
残念だが、今回は豪帯様本人の為にも諦めてもらおう。
『...』
『...』
『...』
無言な空気がこの部屋を支配している。
だが、その中でも豪帯様は俯きながら降ろしている両手に拳をつくりその小さな身体を震わせていた。
それはさながら噴火直前の火山のように。
『...帯』
『もういいっ!!』
『帯!』
案の定豪統様が豪帯様に声をかけるや否や声を張り上げて部屋を飛び出していった。
『...』
『...』
部屋には再び無言な空気が流れた。
...これは当分私も豪帯様に口を聞いていただけないだろう。
『...はぁ』
その重苦しい空気の中で豪統様は部屋にあった椅子に腰を下ろした。
しかし、木の椅子特有のギシッと軋む音は相当量な物体を受け入れた時の様に重たく、そして深く聞こえた。
『お疲れ様でございます』
『あぁ...』
豪統様に声をかける。
それに対して豪統様は天井を仰ぎながらいかにもといった感じで返事を返してきた。
『...はぁ』
そして今に至る。
豪統様は思いのほか豪帯様の言葉が響いているようだ。
そりゃ親としては子の想いはできるだけ反映させてやりたいというのが親心というものだ。
特に豪帯様のように普段我儘を言わない子の願いとしては尚更だ。
しかし時として親はその子を正しい道、または安全の為に厳しくならなければいけない時がある。
しかしそれを仕方ない事と綺麗に割り切るには豪統様は優し過ぎるようだ。
『...私だってできる事ならあいつと一緒にいてやりたい。しかし、...』
また豪統様の一人語
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