第五章
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「では侯爵殿はどちらに」
「丁度いいことに」
「丁度ですか」
「はい、この公園に来ておられます」
今リサがいるまさにこの公園にだというのだ。
「でjは今すぐにですか」
「私が侯爵の御前に向かいます」
そうすると言ってだ、そのうえで。
リサはフランツの前に案内された、フランツは丁度菫達が咲き誇る芝生の上にいた。緑の芝生は紫の菫達が無数に咲いていた。
小さいが確かな紫を見せてそれぞれ咲いている、フランツはその中で青い服を着て白いドレスのリサの前にいた。
彼はリサを見てだ、すぐにだった。
彼女の前に来た、そして片膝を折ってその前に膝まづき一礼して言った。
「姫、はじめまして」
「シュタインベルク侯爵ですね」
「フランツといいます」
彼は自ら名乗った。
「お見知りおきを」
「リサ=フォン=アルデンフェルトといいます」
リサも微笑み名乗った。
「宜しくお願いします」
「はい」
「侯爵、お立ち下さい」
リサはその微笑みでフランツに告げた。
「そのうえでお話を聞かせて下さい」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
フランツは立った、長身の彼が立つと小柄なリサを覆わんばかりだ。だがそこには威圧感はなかった。
穏やかさと気品、それを以てリサの前に立ちだ、フランツもまた微笑みそのうえでこう彼女に言ったのである。
「この公園ですが」
「綺麗な公園ですね」
「誰もが観られる場所をと思いまして」
「造られたのですね」
「そうです」
その通りだとだ、フランツは答えた。
「この場所に。私の財産で」
「侯爵領の収入からではないのですか」
「こうしたことで民の血税を使うのはどうかと思いまして」
それでだった、実際に彼はそう考えて己の資産から予算を出したのだ。
「そうしました」
「それでこの見事な公園を」
「はい」
「わかりました。それでなのですが」
リサはフランツと見合いながらそのうえで周りのものを感じていた、咲き誇る無数の菫達を。
「菫にされた理由は」
「公園を飾る主な花をですね」
「それにされた理由は」
「誰もが楽しめると思いまして。それに」
「それに?」
「貴女に相応しいものは何か」
フランツは語りだした、彼が今本当に語りたいことを。
「それを考えまして」
「私に相応しいですか」
「誰もが楽しく観られて貴女に贈るに相応しいもの」
それは何かというと。
「花、特に」
「菫ですか」
「菫は小さく咲いていますがとても綺麗な花です」
紫のその花はというのだ。
「飾らず優しく、誰の心にも届く」
「そういったことが私に相応しいですか」
「そう思いまして」
それでだというのだ。
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