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すみれ姫
第三章

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 その少女エリザベートがだ、こう兄に言うのだ。
「むしろ噂以上です」
「心根の綺麗な方か」
「そのお姿以上に」
 容姿も噂通りだ、だがだというのだ。
「心根の非常に綺麗な方です」
「そうか、では」
「お兄様が伴侶となさるなら」
「これ以上はないまでの方だな」
「ですが」
 それでもだとだ、エリザベートは兄に忠告もした。
「あの方は贅沢にも豪奢にも心を惹かれません」
「あくまで質素か」
「そうです」 
「やはり誰もがか」
 フランツは妹の言葉を聞いてその顔をさらに真剣なものにさせた。
「告白しても。どんな贈りものをしても」
「ご自身だけ楽しまれても意味がないと」
「そうか」
「そのお心に適うにはです」
 贅沢は何の意味もないというのだ。
「そのことがご存知ですね」
「既にな。しかし」
「はい、ご用心を」
「わかった」
 フランツはエリザベートの言葉をここまで聞いてから贈りもののことを本格的に考えた、その中でだった。
 彼は自身の邸宅の庭を窓から見た、そのうえで今も傍に立っている執事にこう言うのだった。
「庭は今は誰もいないな」
「そうですね、冬ですから」
 侯爵家の邸宅の庭は開放されている、民達にも観てもらい楽しんでもらっているのだ・
 だが今は冬だ、それでだった。
「誰も来ません」
「冬に咲く花は少ない」 
 フランツは寂しい声で言った。
「花のない庭には誰も来ないか」
「そうですね、残念ながら」
「冬に咲く花を探すか」
「冬のですか」
「あの庭は誰もが観て楽しむものだ」
 それ故にだというのだ。
「だからこそな」
「冬に咲く花といえば」
 執事はここでだ、己の頭の中にあるものを察して述べた。
「椿でしょうか」
「椿か」
「東洋の花です、これは如何でしょうか」
「考えてみよう、冬にも花があればこれ以上いいことはない」
「そうですね」
「この庭もより楽しんでもらえる、だが」
 ここでだ、フランツはふと思い立った。その思い立ったこととは。
「他にも必要か」
「この庭園の他にも」
「公園を作るか」
 それをだというのだ。
「領地内にな」
「そうですね、そしてそこもですね」
「開放する」
 誰にもだというのだ。
「そして観て楽しんでもらう」
「それはいいですね、では」
「場所を探し然るべき場所に作る」
 公園、そこをだというのだ。
「そこにも様々な木々と花達を植えよう」
「それでは」 
 こう話してだ、そしてだった。
 フランツは屋敷の庭園に冬の花、椿を置くだけでなく公園も作らせた。予算は全て自分の資産から出してそうした。
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