第三章
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「ですから本当に」
「慣れてるんですね」
「そうです」
見れば支社の人達の顔はどの人も穏やかだ、本当にどうということはない顔だ。
そしてその顔でだ、こう言うのだ。
「ですから」
「そうですか」
「はい、雪は気にせずに」
「今は部屋の中で、ですね」
「鍋とお酒を楽しみましょう」
支社の人はこう言うと空いている若田部のコップに秋田の銘酒を注ぎ込んだ。その酒は実に美味いものだった。
鱈の鍋のシメは雑炊にした、これで最後まで温まってだった。
一風呂浴びてからだ、若田部と王島は用意してもらった部屋に入り二人でこう話すのだった。
王島からだ、若田部に話す。二人共浴衣姿だ。
「さっきの話だがな」
「あっ、こっちの人がお話してくれた」
若田部も応える、二人は今は自分達で敷いた布団の上に胡座をかいている。
「妖怪の話ですね」
「そのお白粉の婆さんの話な」
「夜の十二時か二時か」
「どっちかだな」
「行きますか?」
若田部は考える顔で王島に応えた。
「外に」
「そうしてみるか、試しに」
「丁度雪が降ってますしね」
鍋を食べている時の話通りにだ、そうなっているというのだ。
「丁度いいですよね」
「そうだな、それじゃあな」
「はい、行きましょう」
「ただ。冬の東北で雪が降ってるからな」
「寒いですから」
「厚着をしていこうか」
防寒対策は忘れないとだ、王島は若田部に言うのだ。
「浴衣じゃなくてな」
「ですね、使い捨てカイロも貼って」
「そうしような」
「完全武装して」
「見てやるか、妖怪を」
二人でこう話してだ、薄着の浴衣ではなく完全武装してだった。
二人で外に出た、今の時間はというと。
若田部は自分の左手を見た、そのうえで隣に立っている王島に述べた。
「十一時五十分です」
「あと十分か」
「若しくは二時間十分です」
十二時ならいい、二時なら駄目だというのだ。
「来ればいいですね」
「そうだな、どっちかというと十二時であって欲しいな」
「とりあえず待ちましょう」
「ああ、そうだな」
こう話してだ、そしてだった。
二人でその場に立っていた、残念だが十二時では出なかった。それで。
一旦部屋に戻ることにした、流石に二時まで待っていては身体が冷えて風邪を引くからだ。それで二時まで部屋で酒を飲んで待つことにした。
そして二時近くになってだった。
若田部がだ、ここでも時計を見て言った。
「もうすぐですよ」
「ああ、そうか」
酒を飲みつつだ、王島は応えた。
「もうすぐだな」
「そうですね、それじゃあですね」
「また外に出るか」
「そうしましょう」
こう二人で話して外に出る、そしてだった。
二時になるとだ、急にだった。
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