第七章
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「巨大鰻の存在自体も大問題だけれど」
「ネッシーはいたのね」
「僕も否定しないよ、もうね」
この目で見た、だからこそだというのだ。
「じゃあこの動画はね」
「発表する?」
「そこまではわからないけれど」
「いえ、頭は撮影してないから」
動いている水面の影だけだ、キャサリンはそれ位ならというのだ。
「別にいいんじゃないかしら」
「そうかな」
「ええ、そう思うけれど」
「そうかもね、じゃあこの動画や画像は発表しようか」
「科学的に検証されるわね」
「望むところだよ、むしろね」
そうして欲しい位だというのだ、ネッシー実在を証明するものだからこそ。
影、巨大な鰻は何時の間にか何処かに消えていた。しかしヘンリーはもう確信していた。
「よし、じゃあね」
「大学に戻ったらね」
「僕は検証して動画や画像も出してネッシーの実在を主張するよ」
その目で見たからこそだ、そうするというのだ。
「絶対にね」
「大学に戻ってからが楽しみね」
「そうだね」
こう二人で話してそうしてだった、ヘンリーは大学に戻ると実際にネッシー実在説とその正体は鰻であることを主張した、このことは二人の予想通り大騒ぎになった。
ネッシー実在派の主張の大きな根拠になった、だがそれでもだった。
やはり否定派はまだ多くしかも実在派の中にも恐竜説を唱える者が多かった、大学に戻ったヘンリーはそこの喫茶店でやれやれといった顔でキャサリンに言った。
「結局ネッシーはロマンなのかな」
「否定派にとっても実在派にとってもなのね」
「うん、僕は実在すると思うけれどね」
その目で見たから言うのだ、だがだというのだ。
「そう言うのはロマンなんだよ」
「いないと思いたい、いたいと思いたいのもどちらもなのね」
「うん、だからね」
「それで皆必死になるのね」
「そうだろうね、ネッシーについてね」
こう紅茶を飲みながらパートナーに話すヘンリーだった、キャサリンも自分の向かい側に座る彼の言葉に笑顔で頷く。そうして。
ヘンリーは今度はこうキャサリンに言った、その言葉とは。
「じゃあ僕もそのロマンをこれからもね」
「主張するのね」
「そうするよ、学者もまたロマンが必要だからね」
「ロマンを求めてそれを検証して確かめることが学者の仕事だからね」
「うん、そうするよ」
これからもだ、そうするというのだ。
「ネッシーをね」
「じゃあ私もその貴方と一緒にそうさせてもらうわね」
キャサリンもロマンを見ていた、ヘンリーと同じものを。それでこう言ったのである。
「それでいいわね」
「うん、そうしてくれたら嬉しいよ」
二人はこのロマンも見ていた、それで二人で笑顔で頷き合うのだった。紅茶を飲みつつ。
いないけれどいる 完
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