第五章
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「泳いでるわよ」
「そういう風に見えるだけだよ」
「いえ、何か」
まだ言うキャサリンだった、その影を見つつ。
「本当に動いている感じで」
「まさか、いや」
ヘンリーは最初は笑っていた、だが。
彼は良心のある学者だ、目で見て確かめ調べる主義だ。それで彼もその影を自身の目で見るのだった。
そして見てみてだ、実際にだった。
「これは」
「泳いでるわよね」
「うん、間違いないね」
キャサリンに真剣な顔で答える。
「あれはね」
「じゃあやっぱりね」
「まさか、そんな筈が」
「あの動きは何かしら」
「そうだね、左右に動いているね」
「そうよね、蛇みたいに」
「大蛇?違うな」
その動きを見ながらだ、ヘンリーは自分の知識の中から検証して言う。
「それじゃないな」
「そうね、大蛇ともまた違うわね」
「うん、魚かな」
それではないかというのだ。
「あれは」
「お魚ね」
「そんな感じだよ」
こうキャサリンに話す。
「僕が見たところ。それにしても」
「今度はどうしたの?」
「大きさだけれど」
彼が今言うのはこのことだった。
「大きいね、十メートルはあるね」
「そうよね、それ以上かも」
「若し魚なら」
「ウバザメとかそんなのよね」
「リュウウグウノツカイ?」
「まさか」
ヘンリーはキャサリンの今の言葉はすぐに否定した。
「それは有り得ないよ」
「そうよね、幾ら何でもね」
言ったキャサリンの方でも否定した。
「あの魚はないわね」
「あれは深海魚だよ」
その生態は謎に包まれている、捕獲してもすぐに死んでしまうことが多くしかも出てくれば天候が荒れるとも言われている。
流石にその深海魚だとはだ、二人も否定するのだった。
「海面に出て来ることはあってもね」
「こうして湖にはね」
「ないよ」
可能性はほぼ零だというのだ。
「むしろ今ここに出たらね」
「かえってその方がよね」
「うん、凄いよ」
そこまで至るというのだ。
「だからあの魚はね」
「ないわね」
「うん、じゃああれは」
「何かしら」
「上下に動いていたらね」
その場合はというと。
「哺乳類だけれど」
「ええ、鯨とかアザラシとかね」
ネッシーは首の長いアザラシ説もある。
「そうした生き物だけれど」
「あれは左右だから」
「爬虫類か魚類ね」
「そうなるけれど」
「鰻かしら」
キャサリンは今度はこの魚を出した。
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