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いないけれどいる
第四章

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「この湖はね」
「やっぱりいないのね」
「そうだよ、有り得ないよ」
 まだ言う彼だった。
「ネッシーの存在はね」
「海ならわからないのよね」
「メキシコで恐竜の形をしていると思われる遺跡が見つかったっていう話があったかな」
「あの国でなのね」
「そう、そう聞いているけれど」
 こうした話からもヘンリーは恐竜の生存自体は否定しない。だがそれでもなのだ。
「恐竜はこの広い地球に残っているかも知れないよ」
「アフリカにもそうしたお話が多いしね」
「うん、そうだから」
 やはりヘンリーは恐竜の存在自体は否定しないのだった、この辺りは確証がないことは断言しない学者の良心だ。
「それは言わないけれどね」
「じゃあネッシーは本当に何かしら」
「だから伝説だよ」
 やはりネッシーについてはこう言うヘンリーだった。
「そうとしか思えないよ」
「何か夢がないわね」
「夢があっても現実は夢とは違う場合が多いよ」
 ヘンリーはこの現実も告げた。
「そういうものだよ」
「まあそれはね」
「学者にだって夢は必要だよ、夢がないとシュリーマンだって成功しなかったよ」
 トロイアの伝説を信じていたからこそ見つけられたというのだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「そう、有り得ない伝説はあるよ」
 それがネス湖のネッシーだというのだ。
「まあネッシーを信じている人には悪いけれどね」
「見間違いね・・・・・・あれっ」
 キャサリンはヘンリーの言葉にやれやれという溜息で返そうとした、だがここでだった。
 ネス湖の水面を見てだ、こう言った。
「あれは」
「どうしたのかな」
「いえ、あそこね」
「あそこ?」
「ほら、あれ見て」
 そのネス湖の水面を指差してヘンリーに言うのだ。
「あそこね」
「?あれは」
「ほら、あれね」
 見れば水面に何かが見えた、それは。
 影だった、湖を何かが泳いでいるのだ。それを見て怪訝な顔になってそのうえでこう言うヘンリーだった。
「流木だよ」
「それなの?」
「そうだよ、よくあるじゃないか」
 湖の中に木が漂っていることはというのだ。
「普通にね」
「それはそうだけれど」
「それだよ」
 ヘンリーはこうキャサリンに言う。
「気にすることはないさ」
「流木かしら」
 だが、だ。キャサリンはその影を見ながらこう言うのだった。
「あれは」
「ははは、じゃあネッシーっていうのかな」
「流木にしては形が」
 それがだというのだ。
「違うんじゃないかしら」
「違うって?」
「ええ、横に広くて」
「枝だよ」
「いえ、違うわ」
 その広さは枝ではなかった、それに。
 影は妙に動いていた、キャサリンはそれも見てヘンリーに言う。
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