第四章
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「恐れ多いです」
「とても」
「よいのだ、余が愚かだった」
その彼等にこうも返す王だった。
「その愚かに皆を付き合わせたことを謝る」
「だからですか」
「そう仰って頂けるのですか」
「そうだ、このことは余の自身への戒めとしておく」
こうも言ってだった、そうして。
王はアムリタの捜索を中断させた、そうしてだった。
ピーニャにもだ、こう言うのだった。
「余はわかった、人は不老不死になってもだ」
「様々なものも味わいですね」
「それに耐えなければならない」
「左様です、それは限られた生の中でもです」
「辛いな」
「はい、非常に」
だからだというのだ。
「ですから永遠の命なぞはです」
「手に入れてはなららないな」
「例え手に入れられても」
仮に不老不死になれもだ、それはだというのだ。
「決して」
「そのことがわかった」
王は達観する声でピーニャに話す。
「非常にな」
「そうです、それではです」
「それではだな」
「今からまた」
「うむ、美味いものを持って来てくれ」
王は顔を綻ばさせてピーニャに応えた。
「そして酒もだ」
「そのうえで、ですね」
「飲んで食べた後はだ」
その次はというと。
「妃達を集めよ」
「そうされて」
「そうだ、共に風呂に入ろう」
そうして楽しもうというのだ、彼女達と。
「今日もな」
「わかりました、それではその様に」
「楽しみも永遠なら」
「他のことも永遠になります」
「それは勘弁して欲しいものだ」
あらためてだ、こう言う彼だった。
そして次に馳走を食べる、そして美酒を飲みまた言うのだった。
「美味い、楽しもう」
「王様、ではです」
「明日も」
「楽しむぞ」
生きているその中でだというのだ。
「そうする」
美女達ともだった、王は楽しんだ。しかしそれが終わってからこのことにも気付いたのだった。
「思えば永遠ならこんな楽しみもな」
「何時か飽きて楽しめなくなりますね」
「だとすれば面白くないな」
「ですから永遠はです」
人にとってはよくはないものだとだ、ピーニャは王にこのことも話したのだった。そうしてであった。
王もだ、確かな顔で頷いてだった。
「あってはならないな」
「そうです」
ピーニャはその王に穏やかな顔で応える、以後王が不老不死を求めることはなくなった。そして王として民の為に尽くしその生を楽しむのだった、その生の中で。
アムリタ 完
2013・8・25
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