第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
アムリタ
マガール=シャルータ王は権勢を極め望むものは何でも手に入る様になっていた。広大な国土には多くの民がいてあらゆるものが揃っていた。
馳走も酒も富も美女もだ、彼が望めば簡単に手に入った、だが。
王はある日無念の顔でだ、こう家臣達に言った。
「余は確かに何でも手に入る」
「はい、今もです」
「多くの宝石が献上されています」
「そして山海の珍味もです」
「美酒も」
「そうだな」
こうだ、あらゆる宝玉と金銀で飾った巨大な宮殿の中でもとりわけ豪奢な玉座に座った上で黄金とダイアの杯をその他に誰も飲めない様な美酒を飲みつつ言うのだ。
「余には何もかもがある、だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「余も何時かは死ぬ」
暗い顔でだ、王はこう言った。
「必ずな」
「だからですか」
「今王は」
「そうだ、人は何時か必ず死ぬ」
このことはだ、避けられないというのだ。
「永遠にこのことは出来ないのだ」
「だから今悲しいのですか」
「そう思われているのですか」
「どうにかならないものか」
苦渋の顔でだ、王は家臣達に問う。
「このことは」
「ですが王よ」
王に最も古くから仕えている老臣、ピーニャが王に言ってきたのだった。
「人は死にます、ですから」
「そのことだけはか」
「仕方がありません」
「では余もだな」
「はい、ただ」
「ただ?」
「アムリタという酒がありまして」
老臣は王にこの酒のことを話した。
「これを飲めばです」
「余は死なないのか」
「不老不死になります」
「ではこのまま永遠にか」
「はい、王は生きられます」
そしてだとだ、老臣はさらに言う。
「この世の楽しみを永遠に楽しめます」
「そうか、ではな」
「そしてです」
「そして?」
「この世の悲しみも、痛み、苦しみも」
その全てをだというのだ。
「永遠に味わうことになります」
「そんなことはどうでもいい」
悲しみや痛み、苦しみはだとだ。王は楽しみだけを見て老臣であるピーニャに答えた。
「永遠に楽しめるのならな」
「では」
「すぐにアムリタを探すのだ」
そして自分が飲むというのだ。
「そうするぞ」
「わかりました、それでは」
こうしてだった、王はすぐに国中に触れを出してそのアムリタを探させた、そしてだった。
アムリタが届くのを待った、だが。
アムリタが見つかり自分に届くのを待つ中でだ、国を台風が襲った。
その台風で河が決壊し多くの民が死んだ、台風の嵐と河の洪水で多くの民が犠牲になってしまったのだ。
王はすぐにその場に行った、そうして。
亡くなった民達と壊れてしまった家々、家族や家を失い嘆き悲しむ民達を見た。そのうえでこ
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ