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LIAR
第二章
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 仕事のことでも悩みや愚痴が出ている。私は人の心の中の言葉を聞いてそれで聞き流していた。いちいち聞いて気にしても仕方がないからだ。
 その私に今日はだった。
 職場の先輩が笑顔で声をかけてきた。
「今日暇?」
(暇だったらいいわね)
 くすりと笑って私に言ってくる。
「暇だったらね」
(猫のタマが少し気になるけれど)
「一緒に飲まない?」
(今日はむしゃくしゃするからストレス解消しないとね」
「どうかしら」
(飲むのは駅前の居酒屋酔虎伝ね)
 心の中でも言っていた。
「それで」
(都合のいいことに飲み放題食べ放題あるしね、あそこ)
「はい、それじゃあ」
 私は先輩に笑顔で返した。
「今日は」
「そう、一緒に飲んでくれるのね」
(そうそう、この娘誘い断らないから有難いのよ)
 本音の言葉が笑っていた。
「じゃあ今日のアフターファイブはね」
(飲むわよ、楽しみにしていなさいよ)
「楽しみですね」
 私はにこりとした笑顔で先輩に返した、そうしてだった。
 先輩と二人で飲みに行った、先輩はビールを大ジョッキで飲みながらそのうえで私に対して言ってきた。
「うちの課長最近荒れてるわよね」
(全くあの禿は)
 後輩の娘と同じことを心の中で言っていた。
「どうもね」
(全く、何だってのよ」
「原因知ってる?何で荒れてるの?」
(浮気でもばれたんじゃないの?ガラにもないことして)
「事情はよくわからないですけれど」
 課長の心の言葉はここでは言わなかった。
「何かトラブルでも抱えておられるのかも知れないですね」
「それでなのね」
(ふうん、あの禿にもそういうのあるのね)
「成程ね」
(全く、奥さんには頭が上がらないんだから)
「ところで先輩」
 今度は私から言って来た。
「お家の猫ちゃんですけれど」
「あの娘?」
(あっ、あの娘ね)
「はい、お元気ですか?」
「元気も元気よ」
(元気過ぎて困るわよ)
 先輩の言葉は口からも心からのものも同じだった。
「今朝も御飯御飯って大騒ぎで」
(やんちゃで困るわ」 
「いや、可愛くてね」
(旦那よりもずっと可愛いのよね)
 先輩も結婚している、三つ下の人だ。
「仕方ないわ」
(旦那もね、もうちょっと痩せてくれたら)
「そうですか」
「そうよ、猫はいいわよ」
(最高よ)
 同時に言う先輩達だった、そして。
 先輩は私にこう言ってきた、今度は先輩だった。
「今度うち来る?」
(旦那いるけれどね)
 別にいいというのだ、それは。
「うちの猫見てね」
(お料理も振舞うわよ)
「はい、それじゃあ」
 私は先輩の好意を受け取ることにした、この日は楽しく飲んだ。
 それから一月後だった、実際に先輩の家に行った数日後。

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