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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十四話 これで俺もバツイチだ
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少将」
文書から視線を上げた。じっとミューゼル少将を見ている。そして少将は戸惑っていた。宰相閣下がフッと笑った。

「期待外れですね、喜ぶか怒るか、どちらかと思って楽しみにしていたのですが」
「閣下!」
「私は怒るだろうと思っていました。姉を侮辱するのか、権力を得た途端姉を捨てるのかと……、想定外の反応です」
からかっている口調ではない、淡々としていた。

「理由を教えて頂きたいと思います」
「別れると決断したのは彼女です、理由は彼女に聞けば良いでしょう。彼女はヴェストパーレ男爵夫人の所に行く事になっています」
ミューゼル少将が唇を噛み締めた。憤懣を抑えている。

「ミューゼル少将、卿の新しい任務を決めました。フェザーン駐在弁務官事務所の首席駐在武官です」
「フェザーン? 首席駐在武官?」
ミューゼル少将の顔が歪んだ。そして宰相閣下を睨むように見ている。

「左遷ですか、本来首席駐在武官は大佐が任命されるはずです。離婚されたから意趣返しに私をフェザーンに左遷する! 卑劣な!」
吐き捨てるような口調だった。
「皆がそう思うでしょうね」
「……」
「友達が一杯できるでしょう、フェザーンには私を嫌っている人間が大勢います」

思わず宰相閣下の顔をまじまじと見た。私だけじゃないミューゼル少将も閣下を見ている。
「ようやく話のできる顔になりましたか、ミューゼル少将」
宰相閣下は笑みを浮かべていた。背筋が凍りつく様な恐怖が身体に走った。閣下は夫人を愛していた、愛していたはずだった。それなのに離婚を利用しようとしている、しかも道具として使うのは夫人の弟……。

「小官に貴族達を探れと……」
「一つはそうです」
「では他にも?」
「フェザーンの動きを探って欲しいと思います」
「フェザーンの?」
ミューゼル少将が訝しげな表情をすると宰相閣下は苦笑を浮かべた。

「少将はフェザーンをどう思っています? 言葉を飾らずに言ってみてください」
「……商人の国、金の亡者、拝金主義、そんなところでしょうか」
ミューゼル少将が考えながら答えると宰相閣下が“表向きはそうですね”と続けた。
「表向き、ですか?」
「そう、フェザーンには裏の顔が有ると私は考えています」
少将がチラッと私を見た。分かるか? と言うのだろう。私にはとても分からない。視線を逸らす事しかできなかった。

「それを探れというのでしょうか?」
「いえ、商人の国、金の亡者、拝金主義、それを信じるなと言っています。探って欲しいのはフェザーン自治領主府の動き……」
「……」
「アドリアン・ルビンスキーが何を考えるか……」
私とミューゼル少将が困惑する姿を見て宰相閣下がまた苦笑を漏らした。ミューゼル少将は反発しない、ただ唇を噛み締めている。


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