第四十四話 これで俺もバツイチだ
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金色の髪が美しい儚げな佳人だった。先帝陛下の寵愛を十年に亘って独占したのも納得が行く。
「御仕事中に申し訳ありません」
「いや、気にしなくていい。アンネローゼ、ここに来たという事は決心は変わらないのだな」
「はい、これにサインをお願いします」
夫人は執務机の前に立つと上品な赤のショルダーバックから書類を取り出し宰相閣下に渡した。
書類の内容を確認すると閣下は執務机の引き出しから書類を取り出した。夫人に差し出す。夫人は幾分躊躇したがそれを受け取って視線を走らせた。
「貴方、これは」
夫人が驚いている。
「爵位、領地の返上が私達の結婚の条件だった。離婚する以上、お前に返還するのが筋だろう」
離婚! 驚いて二人を、そして夫人が出した書類を見た。あれは離婚届……。
「ですが……」
「お前を無一文で放り出しては皆が騒ぐだろう、私の事を酷い男だと非難するに違いない。私はこれでも良い格好しいなのでな、お前がそれを受け取るのが離婚に同意する条件だ」
「貴方……」
「幸いお前は物欲の強い女では無かったようだ。返上した所領は少ない、お前に返しても騒ぐ人間はいないだろう。……受けてくれるな」
夫人は必死で何かを堪えていたが頷く事で同意した。それを見て宰相閣下が胸ポケットから何かを取り出した。
「それと、これを受け取りなさい」
「貴方、これ以上は……」
「良いから受け取りなさい」
強い口調に夫人はおずおずと手を伸ばして受け取った。そしてカードに視線を落とす。
「いけません、貴方。こんな、二百万帝国マルクなんて、私受け取れません」
夫人が激しく首を振って拒絶した。閣下の方にカードを突きだす。二百万帝国マルク? 銀行の預金カード?
「勘違いするな、お前のためじゃない。これはお前が治める領民達への贈り物だ。
これからはお前にも領内統治、開発をしっかりやってもらう。その為の資金だ。慰謝料としてお前に払うからそれを使って領地を発展させなさい」
「……」
「私が持っていても何の役にも立たない、お前が使いなさい」
「……貴方、……済みません」
夫人が口元に手をやり嗚咽を堪えながら頭を下げた。
「住居はどうするのだ?」
「暫くは、男爵夫人の所へ……」
「そうか、……今の家も譲ろうかと思ったが伯爵夫人の住まいとしては聊か狭すぎる様だ。それに元帥府にも近い、お前には迷惑かと思って止めた」
「……」
「面白くなかったか、冗談だったのだが」
「……以前にも似たような事を」
「そうか、私は詰らない男だな。離婚されるのも当然か」
宰相閣下が苦笑を浮かべた。夫人がそうではないというように首を横に振った。本当に離婚するのだろうか? どう見ても宰相閣下は夫人を愛している、気遣っているとしか思えない。そして私には夫人が宰相
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