ある約束の戦い (後)
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先に来ていたリンテンスに近づく、意地でしっかりと化粧もし普段通りを装っている。
「それでリン、望みってわけじゃないけど何をさせたいわけ」
無言のまま背中を見せるリンテンスに独り言のように言葉が漏れるのを止めることが出来ない。
「世界の危機とやらも終わっちゃって私の役割はもう無いし、他にあった約束もリンと戦って終わっちゃったし、私はどうすればいいのかしらね」
弱気な言葉が続けられるのを止めようと思うが自分では止めることは出来ない。
「引っ越してやってもいい」
「えっ」
そんな中、出てきたリンテンスの言葉は意外なものだった。
「え、それってどこに。今ならどこだって空いてるし、それこそあいつらが住んでたところもたくさんあるから選びたい放題だけど」
リンテンスの言葉の真意がわからない。
「王宮に住んでやる」
それはまさに不意打ちようにやってきた。いきなりのことに頭の中にまで入って来ない。ゆっくりと理解出来ていくのと同時に込み上げるものがある。
「リン、それって……」
感情のままに抱き付こうるがいきなり鋼糸に阻まれる。
「寄るな、香水臭い」
「今それを言うーーー!!!」
外縁部に、いやグレンダンの空にアルシェイラの叫びが響き渡った。
それから数日後、アルシェイラはある屋敷にいた。
一番いい客間のソファにふんぞり返り、屋敷の主はその前で苦い顔を隠そうともしない。
「で、どう。あんたもしなさいよ、結婚。バーメリンと」
「どうして私まで」
後ろで侍女長が煽っているのを感じ、ミンス・ユートノールは額を抑える。
「だって前あんたが言ったことだし、カナリスは死んじゃったからもうバーメリンしかいなじゃない」
「もうそんなことに拘らなくてもいいのではないですか」
世界の危機も終わりグレンダン三王家が先祖返りを目指す必要もなくなったため、バーメリンを選ぶ必要はないのではと言ってみる。だからと言って他に候補がいるわけではないのだが。
「ふふん、そう簡単に変えられないから慣習っていうのよ」
ドヤ顔でふんぞり返る女王を見ながら狼面衆の暗躍に対処しなくてよくなり心労の種は減ったはずなのに依然として減ったように感じない。
頭と胃の痛みが増し疲労感だけが蓄積されていくミンスの日々はこれからも続くのだった。
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