第14話 降って来たのは雨。現われたのは黒い男ですよ?
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自然な雰囲気でひとつ息を吐き出した。
しかしこれは、急激な運動で身体が酸素を求めた者が行う呼吸ではない。
これは明らかに戦いを楽しんでいる者の雰囲気。彼の顔に張り付くのは相変わらずの表情だが、心の奥底から、この少女との戦いを楽しんでいるように美月には感じられた。
「それならば、これ以上は何も為さずに立ち去りなさい」
表情は真剣なまま。更に、普段の優しい春の日だまりにこそ相応しいその声にも、かなり強い緊張の色をにじませながらそう口にするハク。
但し、彼女の方に疲労を感じさせる事も未だなし。
彼女がどのような修行を、元々暮らして居た世界で行って居たのか美月は聞いて居なかったが、それでも、この人間の限界の遙か向こう側の世界で戦い続けられる状況から推測すると――――
いや、今の美月には人間の瞳に映らないレベルの戦いを繰り広げる為の修業の方法など知り様は有りません。
苦笑とも、嘲笑とも付かない嗤いを浮かべるバンダナの青年。
但し、軽く首を振ってハクを見つめる。それまでと変わらない薄ら笑いを表情に張り付けたままで。
「そう言う訳にも行かないのですよ。これでも下っ端には下っ端なりの役割と言う物が有りまして」
……と言った瞬間、十メートルほどの距離を一瞬にしてゼロにしたバンダナの青年がこれ見よがしに大振りの上段回し蹴りを放つ。
そう。彼の纏う闇と同じ色の旋風が、ハクの側頭部を蹴り砕こうと迫り来たのだ!
しかし!
八相に構えた霊刀の輝きに因り、やや死角に成る右側から正確に側頭部を蹴り砕こうとした左脚の一撃を、すっと本当に身長が縮んだかのような自然な動きで左脚を頭上に躱し、その場でバンダナの青年の軸足と成って居た右脚を横薙ぎに払うハク!
その動きもまた神速。まして、今度の攻撃は身体の軸を狙った一撃。簡単に躱せる物ではない。
神の領域内の交錯。その刹那の時間の間に、青年の周囲で再び濃くなる闇。
その青年を包み込む昏き闇が、再びハクの放つ蒼銀の光輝を阻んで仕舞う。
そして……。
「こちらは終わったぞ」
その昏き闇から人の声が放たれた。
いや、違う。新たに現われた人物。黄泉比良坂の事件の時にも顕われた目立たない顔立ち、革手袋の青年がまた現われたのだ。
そう。彼の纏う気もまた、人ならざるモノの気配。
もしかすると、最初から存在したバンダナの青年よりも危険な気配を纏って居るようにも感じる。
「こちらの方は、後はみなさんに多少の説明を行うだけで終わりですよ」
完全に左脚を失ったかに思えたバンダナの青年が、それまで立っていた場所。ハクと一瞬の攻防を行った地点から、何時の間にか新たに現われた革手袋の青年の傍らに移動してそう答える。
対してハクは元より、タマ
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