暁 〜小説投稿サイト〜
私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
第14話 降って来たのは雨。現われたのは黒い男ですよ?
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ク。

 彼と彼女が動く度に、乱舞する光と闇。
 世界を異世界に侵食して行こうとする黒と、それを押し止めようとする蒼。

 喉元すれすれにまで迫った切っ先を軽やかな、ヒラリと言う形容詞が一番しっくり来る身のこなしで躱して仕舞うバンダナの青年。
 但し、ハクもその程度の事で手を休める事などなく、返す刀で脛を払いに行く。しかし、それすらも紙一重で青年の影を斬り裂くのみ。その黒のスラックスに届くことはない。

「貴方と事を構える心算など、僕にはなかったのですけどね」

 その青年の端整な横顔に浮かぶのは普段通りの嘲笑か。それとも冷や汗か。
 しかし、声や口調にも焦りの色はなく、普段通りの雰囲気で話し掛けて来るバンダナの青年。
 今、この瞬間にも、一般人の目では捉えられない刹那の時間の(戦い)に身を置いているとは思えない非常に落ち着いた雰囲気。

 その瞬間、青年の両手に現れる黒き玉。手の平をいっぱいに広げた程度の大きさから考えると、直径は三十センチメートル足らず。

 巫女服姿のハクが雨により一気に冷やされ、蒸気を上げつつ有る地面に草履の形を深く刻みつけるように踏み込み、右上段から霊刀を振り下ろす!
 彼女の霊力の活性化に伴い、一際強い輝きを霊刀が発し、大気の斬り裂かれる悲鳴さえ聞こえて来るかのようで有った。

 しかし、そう、しかし!

 残心……上段からの一撃を放った後にも心を緩める事もなく、一瞬の内に身体の軸をずらすかのように、僅かに上体のみを右に動かすハク。
 刹那。彼女の顔前の大気を貫いて繰り出された黒き一撃が、僅かにハクの長い髪の毛を散らせた。

 そう。必殺の間合いで放たれたはずの彼女の右上段の一撃を、バンダナの青年はいとも容易く左手に発生させた黒き玉……いや、ハクの振るう蒼銀の光輝を受けて普通の物質で受け流す事など出来はしない。それは、おそらくバンダナの青年が纏う闇そのものの凝縮された存在。その昏き闇で受け流し、一連の流れから同じように闇を纏わせた右腕を繰り出して来たのだ。

 普通の人間。いや、例え達人クラスの人間で有ろうともその動きを瞳に捉える事も、彼らの交わす言葉さえ理解出来ない神の領域での戦い。
 但し、何故か美月には今のハクとバンダナの青年の動きをしっかりと確認出来ていた。

 現実の時間にすると刹那の時間。美月の感覚で言うと、軽く百は数えられる時間の交戦の後、一度離れてから対峙するハクとバンダナの青年。
 ハクの表情は普段とは違う非常に真剣な表情。逆にバンダナの青年の方は、今までと変わらない薄ら笑いを浮かべるのみ。
 そして、

「僕は本来、肉体労働には向いていないのですけどね」

 かなり人を喰った台詞を口にするバンダナの青年。しかし、その頬は僅かに上気し、ごく
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