第14話 降って来たのは雨。現われたのは黒い男ですよ?
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を瞑り見えるのは黒。正体が判らぬ故に黒。そして、すべてに終わりをもたらすモノならば、それも黒以外に存在していないように思われる黒。
彼の背後に現れた黒が、ゆっくりと優しき雨音に支配された世界を黒く塗りつぶして行く。その緩慢な動きはただただ不気味で、ひたすら生ある物を呑み込もうとして居る闇のように思われた。
そう。それは簡単に言い表して良い物ではない。
ただ……。
ただ、決して生ある者は触れてはならないモノ。何故かその部分だけは、はっきりと判る代物で有った。
刹那!
暗闇を斬り裂くは蒼銀の閃き。
しかし、ハクの手にする輝ける霊刀は、バンダナの青年の肉を捉える事は出来なかった。
「ハクちゃん?」
何が起きたのかさっぱり理解が出来ない美月が驚きの声を上げた。
そう。確かに何かが目の前で起きて居るのは間違いない。一瞬、何モノかが目の前を通り過ぎた気配は感じた。そして、光が闇を斬り裂いたのも判る。
但し、ハクの動き……どころか、彼女の姿さえ今の美月にははっきりと捉える事が出来なかったのだ。
「当たり前よ。あいつや、あたしたちの戦いは大気さえも物理的圧力として感じる世界での戦い。あんただって、この雨の中を神速で戦って居るあいつらの余波を受けていない以上、ちゃんと見たら見えるはずよ」
あんたはあたしと対になる存在なんだから。意味不明の呟きと共に、そう話し掛けて来る破壊神の少女シノブ。
……ちゃんと見る?
かなりの疑問符を表情に浮かべながらも、それでも少し瞳に力を籠めるようにして、一瞬一瞬に所を変えている戦いの気配を発する方向に瞳を凝らす美月。
その彼女の周囲に浮かび上がるキルリアン光にも似た淡い燐光。
そう。それは精霊が活性化した証拠。彼女もまた精霊を友と出来る存在で有る事の証。
此の世と彼の世。その境界線上に生きる存在の証。
その美月の瞳に映ったのは――――
蒼穹から重力の法則に従い落ちて来るはずの雨粒さえ停止する世界の中で、淡い燐光を身に纏い軽やかに舞うハクの姿と、昏き闇を纏い舞うバンダナの青年。
彼、彼女の淡い燐光に当たった雨粒が、儚くその生命を散らして行く。
いや、雨粒の落下するスピードさえも停止するような超高速下の戦闘で有る以上、その雨粒でさえも身体を穿つ凶器へと変わるはず。
おそらく、その超高速下の世界での戦闘を可能にしているのが、彼が纏う闇で有り、彼女が纏う蒼い光なのであろう。
そう、その姿は正に光と闇。二人が動く度に巻き起こる風が。飛び散る雨粒が。まるで終わらない輪舞を舞い続けるかのような二人の周囲に渦巻いていた。
究極の黒。闇を纏う青年と。
彼女を……青龍を指し示す蒼白き光輝を纏うハ
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