第14話 降って来たのは雨。現われたのは黒い男ですよ?
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月の瞳に映ったのは――――
「アンタは――――」
蒼穹からは雨が。そして、大地からは蒸気が上がるその中で立つ長身の影。
見た目は東洋人。身長は百八十センチメートル程度。頭髪は黒。その黒い髪の毛が額に掛かる部分を、バンダナで持ち上げて瞳に掛かるのを防いでいる。十人中、八人から九人までは美男子だと表現するであろう容貌。
服装に関しては、濃い緑色のブレザーに白のシャツ。そして、ワインレッドのタイ。スラックスは黒。
何処にでも居そうな、しかし、簡単に出会う事のないレベルの容姿……まるで古代の王の如き整った容貌を持つ青年。
但し、西の街道の事件の際には黄泉比良坂に黄泉津大神を呼び寄せ、
北の森の事件の際には、リューヴェルトの耳元に甘い言葉を囁く。
彼が纏う妖気を感じなくとも判る。其処には非常に危険な敵の姿が有ったのだ。
「あんた、未だそんな使いっ走りのような事をしているの?」
降り始めの雨の中、傘も差さずに胸の前で腕を組み、相も変わらず不満げな形で口を結んでいた破壊神の少女シノブが、彼女に相応しいかなり棘のある口調でそう問い掛ける。
その問い掛けに対して、件のバンダナの青年はこれまでと同じ表情。顔に完全に同化したような薄ら笑いで応えた。
「すみません。僕は所詮、下っ端で、使い走り程度の仕事しか熟せないモノですから」
それでも、貴女方。ここに居る皆さんの事をお慕い申し上げているのは変わらないのですよ。
……と、そう続けるバンダナの青年。但し、その態度の何処か奥深くに、何故か揶揄しているような雰囲気を感じる。それもすべての物に対する嘲笑……。
そう。まるで、その下っ端で、使い走りと自称している自分自身に対しても嘲笑しているかのような雰囲気を纏いながら、徐々に雨脚の強く成って居る世界の中心ですぅっと立ち尽くしていたのだ。
「特に三娘さまに関しては、夜ごと貴女の事を思っているのですよ。多分、貴女はお気付きではないと思いますが」
恋を語るに相応しい口調で、少し危険な台詞を口にするバンダナの青年。見た目だけならば、彼に好意を寄せられたと知ったのなら、大半の女性が気分を良くしたとしても不思議では無い言葉を。
しかし……。
しかし、今までの彼の行動や態度。それに、彼が纏って居る雰囲気などから、美月が感じたのは嫌悪のみ。決して、甘やかな気分になど陥る事はなかった。
その美月の反応を楽しむように見つめたバンダナの青年が、更に哂った。
いや、嗤った。
その彼の背に感じる果てしない黒。正に終焉を司るに相応しい色。
黒く、黒く、黒く塗り固められている闇。
そう、それは正に深淵。深き故に色など存在せず、見た者は黒としかイメージ出来ない黒。
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