魔石の国―Law and affection―
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ることだ」
食事は柔らかい肉のステーキに、焼きたてのパン、彩りのよい野菜サラダ。それと見目麗しく切られている数種類の果物だった。
キノは長老、高位の黒いマントを羽織った五人の男達とテーブルを共にしている。
「どんな国の話がよろしいでしょうか?」
器用にナイフで肉を切り、口に運びつつキノは尋ねる。
「どれくらい発展しているのか、どんな習慣があるのか、近隣の国々を中心に教えてもらいたいと思う」
長老が皆を代表して口を開いた。
「では――……」
キノは料理を次々と平らげながらも今までに訪れた国についてを語った。
長老と五人の男達は時々質問をし、熱心にキノの話に耳を傾けていた。
料理を食べ終えた後もキノは話し続け、時折、使用人がお茶を継ぎ足しに来た。
時間が穏やかに過ぎていく。キノは何杯目かのお茶を飲み干した。
突然、慌ただしい足音が響いてくる。
何事かと長老達が眉をひそめると、扉が大きな音をたてて開き一人の兵士が入ってきた。
「長老!オーブの塔に侵入者がっ」
兵士は息を切らしながら報告する。
「なんじゃと! それで侵入者は?」
長老はすぐさま兵士に問い質す。
「はい。その場で取り押さえ、ここまで連れて参りました」
兵士は扉の外へ声をかけた。すると体格の良い男が、一人の少年を羽交い締めしながら入ってきた。灰色の髪の十歳前後の男の子だった。
少年は俯いており、灰色の髪に隠れて表情はわからなかった。
「この者です」
長老は少年を凝視し、素早く指示を出す。
「こやつの身内をここに呼ぶのじゃ。こやつはキノさんに寝所を提供している夫婦の息子のはずじゃ」
キノは無言でその様子を眺めていた。
夫婦は血相を変えて宮殿へとやって来た。
「あの子は、あの子はどこなのでしょうか!?」
女性は部屋中を見回しながら尋ねる。
「別室だ」
黒いマントの一人の男が短く答えた。
キノは先程と変わらず、席に着いたまま耳を傾けている。
男性は妻より一歩、前に進み出て問う。
「長老、私達の子供はどうなるのでしょうか?」
長老は眉間にしわを寄せ、重々しく言った。
「おまえ達の子供は邪悪なるオーブが封じられていた塔に立入った。この国の掟として、禁を破りし者は身内がなんとかせねばならぬ。よって――――」
長老は一度言葉を切った。夫婦は続きをただ待つことしかできない。
長老は低く、けれどもはっきりとわかる声で言った。
「おまえ達の手で殺せ」
女性が悲鳴を上げて泣き崩れた。男性は妻の肩を抱くが、女性は首を横に振り嗚咽を漏らすのみだ。
「長老、あの子はまだ十と少しの子供です。どうかご容赦を」
男性の顔は痛々しいく
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