魔石の国―Law and affection―
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キノは質問した。
明かりからは電球のような柔らかい光が部屋全体に溢れている。だがランプは一個しか吊されていないにも拘わらずにだ。相手の顔や料理も昼間と同じようによく見える。
「魔石ですよ」
男性は答え、近くに置いてある片手で持ち運べるぐらいの小さな瓶をテーブルへと持ってきた。
瓶の蓋を開けてキノに中身を見せる。中は眩いばかりに輝いていた。
男性は片手で握りしめらるぐらいの光輝く魔石を、瓶から一つ取り出した。
「見て下さい。光を放っているでしょう」
見やすいように手のひらの魔石をキノの方へ差し出す。
「熱くないんですか?」
キノは目を丸くした。
「いえ、そんなことはありませんよ。持ってみます?」
キノは男性から光輝く石をもらう。確かに熱くはない。ひんやりと冷たいぐらいだった。
「石自体が光っているんですね」
キノは魔石を手の中で転がす。
「ずっと輝き続けているんですか?」
「いえ、二、三ヶ月程で光は失われただの透明な石になってしまいます。そうしたら新しいものに買い替えなければなりません」
「そうなんですか」
キノが感心していると
「他にも魔石には色々あるんですよ」
女性が横から口を挟む。
「大きく分けてこの明かりのように石自体が輝いたり、冷気や温かさを持っている石と、専門の細工師が加工して呪い(まじない)を施したものとに分けられるんです。これらは主に指輪やネックレスなどのアクセサリーに使われています」
女性は説明する。
「呪い(まじない)、とは?」
「魔石に特別な力を込めるんです。物理的なものではなく、精神の力とでも言うのでしょうか。それらの魔石には細工師の呪いの種類によって、財に恵まれたり、恋を成就させたりといった効果が現れるそうです。でもとても高価なので、私達庶民にはとても手が出せません」
女性は口許に片方の人差し指を添え
「だから私は細工師が造った魔石に憧れています」
いたずらっぽく笑った。
「お帰り、キノ。食事はどうだった?」
「量が少なかったけど、おいしかった」
部屋に戻ると中は真っ暗だった。それでも窓からの月明かりで、目が慣れるとだいたいどこに何があるかわかった。
コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
キノが許可すると光と共に灰色の髪の少年が入って来た。
「キノさん、明かりを持ってきたよ」
少年は左手に蓋のされた小型の瓶を、右手首に魔石を光源としたランプをぶら下げてやってきた。
部屋が一気に明るくなる。少年は衣装だんすの上に瓶を置いた。
「わぉ、キノ、アレ何?電球みたいに光源が小さいのに部屋全体をむらなく照らしている」
エルメスが感嘆の声を上げた。
「モノがしゃべった!?」
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