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魔石の国―Law and affection―
魔石の国―Law and affection―
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か狂ったかのように話し続けた。










 少年は木製の手枷を掛けられ屈強な兵士達に連行された。
 少年は従順に促されるままに歩みを進める。虚ろな瞳には何も映してはいなかった。
 大勢の人々がこの異様な光景を見に集まってきていた。
「すみません、キノさん。このような事態になってしまいまして。長老よりお詫びを申し上げに参りました」
 人混みに紛れていたキノとエルメスの元に、黒いマントの男が現れた。
「いえ。ところであの少年はこれからどうなるんですか?」
 キノは兵士達に連れていかれる少年の後ろ姿を見つめながら言った。
「そのことなんですが……。キノさん、場所を変えませんか?ここは人が多過ぎますので」










 キノは朝食と夕食をともにしたテーブルへと着いた。
 キノ達と男は夫婦のものであった家の中にいた。
「申し訳ありません。人目を気にせずにお話できる場所がここしかなかったもので」
「別に構いませんよ」
 キノは向かい側に座った男に言った。そこは昨日まで女性の席だった。そしてその隣は男性の席だった。
「キノさんはこの国の掟についてはご存じですか?」
「はい。『禁を破りし者は身内がなんとかしなければならない』でしたっけ」
「その通りです。ご存じならば話は早い。本来ならば掟に従い身内の者があの少年を殺さなければならないのですが……」
 男は言い淀む。キノはちらりと隣の空席を見た。
「……夫婦が亡くなってしまったため、あの少年には身内が一人もいなくなってしまったのです。夫婦のどちらにも兄弟などはおらず、その両親も他界されていました。この国では大変珍しい、親と子のみの家族だったのです。夫婦は自分達で毒を仰いで自殺したようなのですが……。今までこのような事態が起こったことがなかったものですから、我々も頭を抱えております。今、長老と側近一同でどうするべきか議論をしているところです」
「他の誰かがあの子を殺したりはしないんですか?」
「それはできません。なぜなら自ら進んで手を汚すようなこと、誰も引き受けてはくれないでしょうし、そんなことを何の責もない人にさせるわけにはいきません」
「じゃあさ、判決が出るまであの子はどうするの?」
 エルメスが質問する。
「長い間、使われてなかった宮殿の地下牢に入れられ、そこにずっといることになるでしょうね。どのみち、判決が出たとしても普通の生活を送ることはできないでしょう。あの少年にとって殺されることよりも酷なことになったのではないかと私は思います」
 男はそう答えた。
「ボクの疑問に答えて頂き、話をして下さりありがとうございました」
 キノは礼を言う。
「キノさんは今日、出国されるのですよね?」
「はい、そうですけど何か?
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