暁 〜小説投稿サイト〜
魔石の国―Law and affection―
魔石の国―Law and affection―
[11/13]

[1] [9] 最後 最初
けて、キノは言った。
「おはよう、キノさん、エルメスさん」
 キノは目を見張る。ドアノブを回して現れたのは少年だった。
「キノさん、エルメスさん。父さんと母さん、見なかった?」
 少年は尋ねる。
「今日はまだ一度も会っていないよ。どうかしたのかい?」
「いつもならもう母さんが朝食を用意して、父さんは席について待っているはずなんだけど、今日はまだ起きていないようなんだ」
「……。寝室とかは探してみた?」
 考え込み、キノは訊く。
「まだだよ。キノさんとエルメスさんに尋ねてから行こうと思ってたんだ。今から確かめてくるよ」
 部屋から出ていこうとする少年に
「待って。ボクも行く」
 右腿と腰に吊ってあるパースエイダーを確認し、キノは言った。










 夫婦の寝室にキノは少年と共にやってきた。
「父さん、母さん」

 少年がドアをノックしながら呼び掛けるが、反応は返ってこない。
 少年は何度もノックし呼び続けるが、中からは物音一つしない。
「ちょっといいかい」
 少年に脇にどいてもらい、キノはドアノブを握る。
 鍵はかかっておらず、扉は容易に開いた。
 最初に目に留まったのは、俯せに床に倒れている夫婦の姿だった。キノは動かない男性と女性に近づく。
 二人の近くにはからっぽの小瓶と二つのコップが転がっていた。
「父さん、母さん……」
 少年は瞳を大きく見開き、唇を震わしたまま立ち尽くすのみだった。
 キノは男性と女性の脈を調べる。
「キノさん、父さんと母さんは……?」
 少年は掠れた声で訊く。
「亡くなっている」
 キノは頭を横に振った。そして二人の顔を覗き込み、開いていた目を閉じてやる。
「どうして……」
 少年は一歩、二歩と踏み出し、夫婦に近寄る。その瞳に両親の姿を映し、凝視した。
 少年は落ちていた中身のない小瓶を拾い上げた。
「そう……か。ボクは……ボクは……許されていなかったんだ」
 そう言いながら小瓶を鼻に近づける。
「この中に毒が……あって……飲んだんだね。……ボクが……あの塔に…………オーブと会っていたから……?」
 少年は両親の傍らにいるキノへ視線を移す。
「キノさん。父さんと母さんは……ボクに毒を飲ますように言われていたんでしょう」
「……」
 キノは何も言わない。
「ボクを殺せばよかったのにね。ボクがいけなかったんだからボクが死ねばいいのに……。ボクを殺したらいいのに。ボクはそれでも構わなかったよ」
 少年は小瓶に口をつけ、流し込むように傾ける。だが中身は一滴も残っていなかった。
「ボクが飲めばよかったんだ。……父さんと……母さんは……はず……なのに……」
 少年は独り、話し続けた。涙は浮かべずに、変わり果てた両親を見下ろし、どこ
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ