六月 野心なき謀略(四)
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だったらしい」
「御教授ありがとうございます、首席監察官殿」
「かまわんさ、折角だからここからは、見学させてもらうつもりだ。
どうやら最後の詰めも近いようだしな」
「――緊張を煽らないで下さいな。
まぁ、それでは首席監察官殿もいらっしゃる事だし、一度、情報を整理してみましょう」
と馬堂が目で合図すると岡田少尉が頷いて立ち上がる。
「はい、それでは自分から。
まず、我々の監察対象は広報室、或いは文書課における報道機関に対する情報の漏洩です。
我々が以前から内偵していましたが、陸軍局内のより詳細な調査が必要だったこともあり、監察課と協同して調査を行う事になりました。
そして、この情報流出は六月の中旬に入ってからほぼ完全に停止しており、
これは、おそらく広報室が監察課に接触したことが原因と思われます」
ちら、と視線を資料に落とし、再び報告を行う。
「第二に、その容疑者は高等掛の事前調査とそれを引き継いだ分室の調査によって三名に絞られました。
文書課の渉外交渉係長である津島大尉、広報室の主任である小森中尉、平川中尉です
三名とも外部との接触を行う事が多い事、そして退役が近い――津島大尉殿も年齢的には配属先次第ではそろそろでしょう――事が主な要因として挙げられます」
「彼らについても調査を行ったのだな?」
大路分隊長もいつの間にか面白そうに資料を読んでいる。
「はい、分隊長殿。そして、これらの内偵調査の中で判明した事実の中で目新しいものとしては津島大尉が桜契社の互助基金から受けていた融資状況の実態把握が行われました」
「父親が経営している読本屋の支店だったな?火災にあった分追加で出資を行ったのだったな」
堂賀首席監察官の確認に岡田少尉は首肯する。
「はい、これに関しては分室長殿が得た情報を元に裏取りを行いました。
投資先の読本屋は経営状況も良好であり、返済の遅滞もなく津島大尉の証言通りとなっております」
「そしてもう一つ――津島大尉と平川中尉の諍いについてですが
こちらは分室長殿の聞き取りである程度把握されました。
原因は連絡課員の失敗で既に和解済み、親しくはありませんが、軍務に支障をきたす事もありません」
「自身を危険にさらしてまで復讐するようなものでもないという事だな」
と大路分隊長が顎を掻きながら云った。
「――だといいですね」
ぼそり、と呟く豊久はどこか物憂げであった。
「概略は以上です。詳細は書面にて皆様のお手元に配布してあります」
「ご苦労だったな、少尉。
ふむ、それでは諸君らの意見を聞こうと思うが、どうかな?」
堂賀は面々を見回す。
「ざっと概略を撫でただけですが、幾つかの要素を結べば図面が浮かび上がりそうですな」
と大路分隊長は顎を掻きな
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