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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
長き夜
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」
「本当に?」
「うん。命がね、段々と抜けていってるのを感じるんだ。それに、自分の身体のことだもん。僕が一番解かってる」
「そっ……か」
そう言って、木綿季は胸の上で小さく身じろぎする。
「大丈夫だよ、蓮。大丈夫。絶対に……絶対に、上手くいくから」
震えていないのが不思議なほど、中身のない言葉。
しかし、それをわざわざ口に出して言わねばならないほど、木綿季は追い詰められているのだ。
否、そこまで追い詰めたのは他でもない蓮自身なのだが。
「………うん」
えへへ、と木綿季は笑う。
屈託なく、本当に屈託なく笑う。
それでも、蓮は感じていた。皮膚の触感も、温度を感じることもできないほど衰弱しきった身体でも、感じていた。
ぽたり、ぽたり、と薄い入院着に染み込む温かい涙の温度を、ぬくもりを。
痛いほど、感じていた。
ゆえに、蓮は言う。
急激に湧き上がってきた眠気に、懸命に抗いながら。
「ありがとう、木綿季ねーちゃん」
白く染まる闇に飲まれる前に蓮が聞いたのは、少し苦笑気味な木綿季の声だった。
「どーいたしまして。────蓮」
目を閉じた小日向蓮の顔をきっちり見、紺野木綿季は彼の胸の上から顔を上げた。
その際、零れ落ちた涙の粒が、淡い青色という手術衣みたいな入院着の上にできた水溜りに音もなく落ちる。
それを無駄なことと知りつつゴシゴシし、それから今更のように自分のした行為に対しての羞恥心が表に出てきた。
かぁっ、と顔に血が上ってきて、目を擦っていた手で目を覆った。
気分的には、うわぁもうなんでこんなことしちゃったんだよボクぅぅー!!みたいな感じだ。
結論から言って、かなり混乱中である。
うわぁー、うわぁー、と蓮を起こさないように超小声で、しかも身悶えしつつ喚く木綿季。傍目から見たら、完全に変人である。
バタバタバタ、と高速で手でうちわを作って顔を少しでも冷やそうとする。が、顔に上った熱はこびり付いた泥のように中々取れない。
パタ、と扇ぐのを止めて少しだけ冷静に、木綿季は傍らを見る。
頬がごっそりとこけ、もはや残っているのは骨と皮だけだと確信できるまでに痩せ細った少年を姿を。
「…………………………」
それを見て、やっと木綿季の頭は静けさを取り戻した。
同時に、忘れていたかった事も、思い出してしまった。
「……もう無理、かぁ」
一番聞きたくなかった言葉。
絶対に、蓮だけはそんな弱音を吐かないと思っていた言葉。
天井を仰ぎ見る。
口許から一つ、ゆるゆると重いため息が吐き出された。
助けて、とは言えない。
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