第一物語・後半-日来独立編-
第五十二章 その場所へ想い走らせたならば《3》
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
一歩を確実に歩き、確かに距離を縮める。
セーランは開いた実之芽との距離を縮めるように歩き、腕を伸ばせば届く距離にまで来た。
そして、実之芽の襟元を掴んだ。
「う……!」
掴まれ、漏れる息が声となって外へと出る。
何故、身体が動かなかったのかは実之芽は分からなかった。
抗いの行動を取らなければと、あがこうとするが、その前に身体を後ろへと突き飛ばされた。
日来の長は何がしたいのか、意味が分からない。
だがお陰で身体に自由が戻った。
何故に身体が動かなかったのかは分からなかったが、別にどうでもいい。
今は日来の長を倒す、または解放場に近付けさせなければいい。
構え、何時でも行けるように体勢を整える。
ため息に似たものを吐き、再び距離を詰めようとするセーランに対し、実之芽は今度は打撃を放った。
素早い移動は一瞬にして距離を詰め、無理矢理縮められたバネが勢いよく跳ねるかのように腕が伸びる。
利き手である右手の打撃。
当たった衝撃と共に、雷撃が起こるようにした。
それも容赦の無い、本気の本の字くらいは付くぐらいの。
狙いは容赦無く顔面。
食らえばかなりの痛手を追う。
柔な盾では防げない。
避けられるものなら避けてみなさい!
拳は確実に顔面を捕らえる軌道に入っており、一方のセーランは目の前の拳には目もくれていなかった。
今、セーランが見ているのはこの場所ではないからだ。
目のやる場所は拳の向こう側ではない。
彼が見ているのは未来だ。
だから、拳がこう来ることも予想の範囲内である。
避ける必要など無い。
ただ攻撃を受けるだけだ。
一切の動きを見せないセーランに疑問を持ちながらも、実之芽は攻撃を続行した。
秒も経たずに打撃は当たり、拳から一気に雷が流出するように現れた。
閃光が放たれ、眩しい光が辺りを照らす。
通り過ぎる形でセーランの背後に行った実之芽は反転し、振り向いて見た。
当たった時の感触が、人のものではなかったからだ。
防がれたのだろうか。
まさか。
拳と顔との距離は拳一つ分すらもなかった。
防がれる筈がないと、自分に言い聞かせるように思う。
しかし、現実は違った。
目の前には、一人、立っていた。
それも無傷でだ。
「どうして……」
まさか防がれるとは思っていなかった。が、防げたとしても無傷などありえない。
あの攻撃は本気の一撃に近かったものだ。
ただの打撃だが、まとう雷は現実空間に起こる雷の比ではない。
多分、この世にある全ての抵抗を無視出来るであろう雷だ。
神雷とまではいかずとも、言うならば超雷か。
見た目とは釣り合わない強さの筈が、相手に傷一つ付けられないなどおかしい以外の何ものでも
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ