締まらない人々
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レーサーの頭部を保護するフルフェイスヘルメットにも似た外観の、黒き装甲で造られた仮面。こう表わせば、護堂の『黒の戦士』モードと似た印象を受けるが、実際に見ればそんな印象は吹き飛ぶことだろう。
最も大きな特徴が、目に当たる部分の、昆虫の複眼のようなバイザーだろう。黒手袋に覆われた手には鋼色の魔銃を握り、黒く長いケープを靡かせながら、まるで舞台に立つ役者のように叫ぶ。
「確かに、出遅れたことは認めよう。私が君の出現を知ったのは、君が現界してから半日以上も経った後の事だった。それから直ぐに出立したとはいえ、交通網が完全に麻痺しているニューヨークにロサンゼルスから来るのが遅れたのも事実だ!しかし、これは酷いとは思わないかね?」
大仰に、両手を大きく広げながら空を仰いで叫ぶ仮面の男。
もしここに、事情を全く知らない人がいたなら、この変な格好をしている人は、一体誰に向かって話しているのだろう?と疑問に思ったかもしれない。むしろ、警察を呼ぶために携帯電話を取り出していたかもしれない。
しかし、今、ここには彼と一人・・・否。一柱しかいない。
『何が酷いと?神殺しよ。』
「だってそうだろう?貴方は、このアメリカでは特にポピュラーな神性だ。創作されてから僅か百年も経っていないというのに、アメリカでの君たちの知名度は凄まじいものがある。もしかしたら、貴方を見た原作のファンが気がついたかも知れないね。貴方こそが、『クトゥルフ神話』に出てくる架空の神性、アフーム=ザーだということに。
人類の敵とされる『邪神』を、この私が華麗に退治する。この上なく上等の英雄譚だとは思わないか?それなのに、観客の一人もいないのでは面白みが無い!」
『・・・お前は、私に勝利するつもりでいるのだな?』
それまで、空間に声だけが響いていたのだが、急にソレが鮮明になる。声の主、まつろわぬアフーム=ザーが、自由の女神の頂上に姿を現したのだ。
大きさは約15メートル程。余りに巨大過ぎるソレは、燐光に似た不浄な青白い光を放つ灰色の炎の存在である。
ソレが姿を現した途端、それまでは自由の女神だけで留まっていた氷結が広がり始める。パキパキ、パキパキと不吉な音を立てながら、恐ろしい速度で広がっていく極寒の世界。この分では、ニューヨーク全てが氷の彫像と化すのも時間の問題であった。
そう。まつろわぬアフーム=ザーとは、世界に数ある神性の中でも異端。炎の属性を司る神性でありながら、その炎は極地の極寒の冷気を伴う。炎と冷気、両方の神性を持つ神なのである!
同時に、狂気の権能がそれまでに倍する威力で放たれた。狂気と冷気、二つの権能を叩きつけられながら、それでもなお余裕の態度を崩さない男。
「当たり前だろう?一体誰が、負
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