第六十話 束縛
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、アスランは突然この先の事について尋ねてきた。ミーアは訳が分からず一瞬茫然とした表情をアスランに向ける。アスランも意味が伝わらない言い方だった事に気付いたのか説明を捕捉する。
「君の役割は言ってしまえば戦争のプロパガンダだ。少しでも早く平和になるために士気を上げさせようという議長の試み……わかってるとは思うが、この戦争が終われば君の役割も終わりなんだ」
シンデレラは十二時に魔法が解けてただの少女に戻ってしまう。つまり、ミーアがラクスを演じていられるのはこの戦争が終わるまでという事だ。戦争が終わってしまえば彼女はラクスを演じる必要がなくなる。はっきり言って政治的に彼女の存在は戦後には邪魔だからだ。だが、ミーアはこれまでそんな事を考えていなかった。いや、あえて考えようとしなかった。
自分はラクス様の代わり。そっくりな声で話せて歌えるだけのちっぽけな存在でしかない――――そんな彼女はいつか自分がその役割を失うことなど本当はとうの昔に気付いていた。だけど、それに気づかないふりをして、与えられた役割を演じて、自分がただラクスに成り替わる。そういった夢に浸っていたい。
だけど、アスランはそれを良しとしない。何故なら、いつだって彼は人一倍真面目で何に対しても考え込んで、現実を見つめる人間なのだから。
「私は――――別に幻想でもいい。嘘で塗り固めた事実でもいい……ただ、貴方と一緒にいて、ラクスを演じて皆を幸せにしたい」
だが、それは叶わない夢でしかない。薄氷の幻視に過ぎない。例え本物が消え去ったとしても彼女が本当の意味でラクスになることは出来ず、本物の役割としてラクスを求められることはない。彼女自身が自分と向き合わない限り、彼女は永遠にラクスの幻影という存在に束縛された人生を歩むことになる。
それが本当に不幸な出来事なのか、或いは、それは本人や周りにとって幸福であるのかもしれない。少なくとも今現在、ミーア自身は己が不幸などと感じていることはなかった。
「だからね、大丈夫よ。私は――――」
「……わかった。もし君が本当の自分を見せることが辛いっていうのならこれ以上詮索はしない。だけど、自分がラクスではなく、ミーアだっていう事だけは忘れるな。自分を押し殺して作るような幻想はきっと後悔しか生まないことになる」
重く溜息を吐きながらもアスランは同意を示すと共に警告を促す。それは自分がアレックス・ディノでいた頃の経験則からなのか、或いは他の要因によるものなのか。どちらにしても、その言葉はミーア自身の胸に大きくのしかかるような言葉だった。
◇
「結局どうする気なんだ、隊長さんよ?」
消耗しているガーティ・ルーのMSパイロットの一人であるダナはネオに対してそう尋ねる。彼にとっては軍組織であり、ファントムペイ
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