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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十話 抜いた以上容赦はしない
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爵夫人にブラウンシュバイク公爵夫人が
「クリスティーネ、私達は負けたのです。その事を受け入れなさい」
と声をかけた。静かな諦観を含んだ声だ、そしてリッテンハイム侯爵夫人が嗚咽を漏らし始めると公爵夫人は彼女を抱き寄せた。……憐れな事だ、だがブラウンシュバイク公爵夫人の言う通りだろう。現実を直視し敗北を受け入れなければ危険だ。

「良くやってくれました、アンスバッハ准将、シュトライト准将。そのレコーダーをこちらに」
司令長官が声をかけるとシュトライト准将が司令長官に近寄った。
「御約束は守って頂けますな」
「もちろんです、私の覇権が続く限り、彼女達に新たな爵位と新たな領地を与え平穏に暮らせるように手配します。そして私は彼女達に或る一定の敬意を払い、肩身の狭い思いをさせる事はしない。ここに居る皆が証人です」

シュトライト准将が大きく頷いてレコーダーを司令長官に渡した。
「だから貴女達も約束して欲しい。これ以降は政治的野心を持たず、帝国の一貴族として生きて行くと。その事がこれ以後、貴女達の安全を保証する事になる」
司令長官の言葉に公爵夫人達が頷いた。

……そういう事か、司令長官は両家の安泰を条件にリヒテンラーデ侯の本心を探るようにアンスバッハ准将達に依頼した。いやむしろ裏切るように仕向けた。司令長官にとってもアンスバッハ准将達にとってもリヒテンラーデ侯は信じられる存在では無かった。だから手を組んで追い落としを図った……。

司令長官がこれまで政治的な動きをしなかったのは権力に関心が無いからではない、むしろ逆だ。権力の恐ろしさを知っているからだ。権力者の猜疑心の恐ろしさを知っているからこそ政治的な動きをしなかった。関心を示せばリヒテンラーデ侯は必ず司令長官の排除に動いただろう。

貴族連合を下し宇宙艦隊を直接率いている今こそリヒテンラーデ侯を廃す時、司令長官はそう判断しリヒテンラーデ侯を罠に嵌めた……。司令長官に視線を向けた。穏やかな表情をしている、興奮も無ければ怒りも無い。司令長官にとっては全てが予定通りなのだろう。最初からリヒテンラーデ侯を始末して帝国の覇権を握るつもりだったのだ。

「リヒテンラーデ侯が我々を裏切りました。侯にとっては我々平民、下級貴族は消耗品でしかないようです。役に立つ間は利用するが邪魔になれば排除する、所詮は道具でしかない」
「……」
皆が黙って聞いていた。

「これより帝都オーディンに向けて進撃します。帝国は一部特権階級の私物に非ず。リヒテンラーデ侯、そして彼に与する者達を排除し帝国を彼らから解放します」
言い終えて司令長官が皆を見渡した。反対する人間は居ない、皆がそれぞれの表情で賛意を示した。

「総参謀長」
「はっ」
「帝都オーディンに連絡してください。貴族連合軍は降伏したが投
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