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特殊陸戦部隊長の平凡な日々
第1話:ハイジャック事件
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さく呟くと、足を床に降ろすと背筋を伸ばし、
手元のパネルを操作する。
数秒おいてゲオルグの眼前にウィンドウが現れる。
画面の中では茶色い制服を着た女性が敬礼をしている。
ゲオルグは軽く手を上げて返礼すると、用件を切り出した。

「現地の通信回線と映像の秘匿回線は傍受してるよな。
 どっちもこっちに回してくれ」

女性が硬い表情で頷くと、少ししてゲオルグの前に新たなウィンドウが現れた。
そこには、次元港の片隅にある民間用の次元航行船と突入の準備をしている
次元港警備部隊の隊員たちの姿があった。

「ありがとう、引き続いてそっちでもウォッチしといてくれ」

ゲオルグはそう言って最後にニコッと笑ってから通信を切った。
ウィンドウが閉じるのと同時に、ゲオルグの表情はもとの少し不機嫌にも
見えるものへと変化した。
その眼は次元港の映像に、耳は次元港警備部隊の通信音声に向けられている。

『第1小隊は船体後方から接近。 第2小隊は船体前方の緑地帯で狙撃体制。
 作戦開始時刻は・・・』
 
警備部隊の部隊長の声で隊員たちへと指示が飛ぶ。

(マニュアル通りか・・・。ま、大丈夫だろうけど・・・)

傍受している通信音声を聞いて警備部隊がとろうとしている作戦の大枠を把握した
ゲオルグは、マニュアル通りの対応に安堵しつつも、心の片隅がざわつくのを
感じた。

(まさかこっちの動きが読まれてるなんてことは・・・)

そこまで考えてゲオルグは己の悪い予感を振り払うように首を振る。
が、一度浮かんだ疑念は晴れず、しばらく悩んだ挙句ゲオルグは通信をつないだ。
ゲオルグの前に現れた2つの通信ウィンドウの片方には1人の男性が、
もう片方には同じく1人の女性が映っていた。

「よう。忙しいとこ悪いんだけど、ちょっと頼まれてくれないか?」

ゲオルグが画面の中の2人に向けて声をかけると、男性のほうは黙して頷き
女性のほうはあからさまに嫌そうな顔を見せた。

『どうせまた面倒なことを言い出すつもりなんだろう?』

銀色のロングヘアーを掻き上げながらそう言う女性士官にゲオルグは苦笑していた。
まあそう言うなと彼が返すと、一見子供のようにも見える女性士官は
眉間に寄せたしわを深くする。

『お前はいつもそうだ。私はいつだってお前に振りまわされるばかりではないか』

「お前に負担がかかってるのは悪いと思ってるよ、チンク。
 でも、他にお前の役目を任せられる人材に心当たりがないんでね」

『それを見つけてくるのが部隊長の役目ではないのか?』

「探してはいるからもう少し辛抱してくれって」

頭を掻きながらゲオルグが返すと、画面の中の女性士官・・・チンクの手が
わずかに震えだす。


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