モジャモジャ緑さん
ある山奥の小さな村に伝わる話で『モジャモジャ緑さん』というものがある。
昔々に1人の女の子が村の外れにある崖から足を滑らせて命を落とした。
そこは足場が悪く危ないからという理由で村人達は滅多に近づかないような場所。どうして彼女はそんな場所に行ったのかというのは謎なのだが、一説では母親のために薬草を採りに行ったのではないか?という風に考えられている。
話を戻すが、その彼女の遺体はすぐには発見されることはなかった。なんせ人が寄り付かない場所で、崖下の鬱蒼と茂る背の高い草花に隠れてしまっていたから。
結局村の捜索隊に発見されたのは彼女の死後から3ヶ月も経ってからだった。
その時発見された彼女の遺体は腐敗が激しく周囲に酷い腐臭を放っていた。その崩れた皮膚の至る所から苔が生えており、全身がまだらな緑色、乱れバサバサになった髪も苔の緑に覆われていたという。
そしてこの話はこれだけでは終わらない。
村で彼女の祟りが起こりだしたのである。
最初の被害者は村でも評判だった可愛い女の子。暗い軒裏で死んでいるのをその父親が発見した。最初は殺人事件とされていたが、そうこうしているうちに二人目の被害者が出た。次は八百屋の1人息子で自室内で遺体が発見された。それからは歯止めが効かなくなったかの様に次々と犠牲者が増え続け、翌週には別の男子が、その二週後にはまた別の…というように最初の女の子が死んでから一年の間に18人もの人間が怪死した。
この一連の犠牲者達にはいくつかの共通点があった。一つは全員が15歳の誕生日に死んでいるということ。もう一つは死体には必ずどこかに苔が付着しているということだ。
あの事故で死んだ少女の年齢は15歳、その遺体には多くの苔が生えていた。このことから村人達はこれは不運な死を遂げた少女の呪いだと確信した。
村の寺に彼女の所持物を祀ったり、被害に遭うだろう少年、少女を隔離したりと手を尽くしたが結果は同じだった。
皆が途方に暮れている時、ある夫婦の娘が15歳の誕生日を迎えようとしていた。手塩にかけて育てた一人娘を絶対に失いたくなかった夫婦は村の外に住んでいる知り合いの家にその娘を養子に出した。この村そのものが呪われているのだったら村の外なら安全なのでは?と考えたからだ。
そしてどうやらその考えは正しかったらしい。養子に出された娘は15歳になっても死ぬことはなかった。ほかの村人もその真似をし次々と自分の子供を養子に出し難を逃れた。
その風習は少しづつ形を変えながらもひっそりと続けられている。村で子供が産まれたらすぐに養子に出し、15歳を超えると自分の家に呼び戻す奇妙な風習。
これが村に伝わる『モジャモジャ緑さん』のお話です。
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