第5章 契約
第74話 翼人
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が直接手を下した訳では有りません」
まさか、こんな説明のような台詞をタバサが口にする訳は有りませんから、引き続き俺が説明を続ける。
まして、これはウソ偽りのない事実。
「我々が命じられた任務は翼人と、ゴアルスハウゼンの村人との間に起きた諍いの解決で有って、翼人を根絶やしにしろ、などと言う命令は受けては居りません」
どうも、自分たちに都合の良い解釈をしている村長以下の村人たちに対して、そう伝えて置く俺。それに、そもそも翼人を根絶やしにしろ、などと言う命令を出すと困るのはガリア王家の方。ガリア王家と翼人の良好な関係を捨ててまで、この辺りの地方から木材を得なければならない理由が今のガリアに有る訳では有りません。
何故ならば、高レベルの系統魔法使い数人分の能力を誇る傭兵を雇い入れる事が、翼人との関係を良好に保つ事が出来たのならば可能なのですから。
俺の言葉に、この場にやって来たゴアルスハウゼンの男性たちから、明らかな落胆の色が発生した。ただ、その状況から見ると、この翼人たちと彼らの間に存在する諍いの根深さが窺えると言う物でしょう。
もっとも、所詮は田舎の村と翼人との諍いですから、俺やタバサの持って居る能力で解決出来ないレベルの諍いと言う訳ではないとも思いますが。
そう考える俺の直ぐ傍を、十一月半ばのスイスに相応しい風が吹き抜けて行く。
そして、その風を感じた事に因り、ワイバーンの背に乗せられた翼人の少女と、自らの傍らに立つ蒼い少女に意識を向ける俺。
精霊の加護を受ける今のタバサに寒暖の差が影響を及ぼす事は少ないのですが、未だ意識の回復しない翼人の少女に関しては、そう言う訳にも行きませんか。
それに何時までも立ち話を続けて居ても意味はない。まして、幾ら火竜山脈の外れとは言っても、早々、熱い訳は有りませんから……。
一度、村人たちの方向から視線を切り、紅から蒼に移りつつある世界の中に立つ少女に視線を向ける。
俺の視線とその意図に気付いたのか、彼女は俺だけが気付く程度の仕草で微かに首肯いて答えた。
成るほど。ここにこれ以上留まる理由はない、と言う事ですな。
それならば、
「取り敢えず、ゴアルスハウゼンの村に行ってから詳しい話を聞きたいのですが、案内して貰えるのでしょうか?」
……と、村人たちの方向に再び視線を戻した俺が問い掛けたのでした。
☆★☆★☆
ガリア国境沿いに有るゴアルスハウゼンの村は、人口三百人未満の、ガリアでは辺境に存在するごく有り触れた村のように俺には感じられた。
村の主要な産業は林業。ただ、火竜山脈の御蔭で、地球世界の同じ地方と比べると寒冷ではない為にある程度の農業も行える地方。まして、これから先はジャガイモを普及させて行く
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