第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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え?」
何処か笑みが混じった士郎の声に、キュルケは俯かせていた顔を上げた。キュルケと目が合うと、士郎はふっと笑みを浮かべ、言葉を口にする。
「大切だから、巻き込みたくない。そんなこと、キュルケもわかっているだろ」
「……それは、だけど、少しぐらい頼ってくれたって」
「頼っているさ」
「え?」
士郎の言葉に、鳩が豆鉄砲を撃たれたような顔になるキュルケ。どういうことだと目で問いかけてくるキュルケに、士郎は笑いかける。
「キュルケは、さっきの話を誰から聞いたんだ」
「……それは、前にタバサが実家に帰る時についていった時に聞いたのよ。タバサの実家、オルレアン家の執事にね。ほら、覚えてない? ラグドリアンでの一件。実はあの時の一件も、ガリア王家の命令を受けてたんだけど、その時よ。タバサとガリア王家との関係を聞いたのは……でも、それがどうかしたの?」
「何時も鋭いお前が珍しいな。まだ分からないのか?」
首を傾げる士郎に、キュルケが苛立ちが混じる声を返す。
「分からないって……だから何が」
「タバサはキュルケの同行を許したんだよな」
「そ、そうだけど」
「で、もちろんタバサは実家に自分の事情を知っている執事がいるってことを知っているよな」
「当たり前でしょ、自分の実家なんだか―――ぁ……」
士郎の言葉に苛立たしげに頷いていたキュルケの顔がピタリと止まる。目が、気付いた事実に大きく開く。
「そしてもちろんタバサはお前の性格も知っている。実家に連れていけば執事から自分の事情を聞き出すことも理解できていた筈だ。自分が王弟の娘で、父を殺され、母を狂わされ、そしてそんな相手の命令に従っていることを……な。なのに、知られると分かって実家への同行を許した。つまりそれは―――」
「―――わたしにそのことを知って欲しかった……」
顔を俯かせポツリと呟くキュルケ。
「まあ、想像でしかないがな。辛いことや悲しいことは、話すことで楽になることもある。まあ、もちろんそれも相手次第だが。信頼出来る相手ならば、話すことで一緒に悩み、支え合い、乗り越えることが出来る……寄りかかることも、な」
「ったく、馬鹿じゃないのあの子は、わかりにくいのよ……」
テーブルの上に置いた手を握り締めながら、キュルケは噛み締めた口から声を漏らす。
身体を、声を震わせたキュルケは、勢いよくテーブルに額を当てる。
ゴンッと、硬い音を立てテーブルが微かに揺れた。
「でも……本当に馬鹿なのはわたしね……あの子の口数が少ないことなんて、ずっと前から知っていたのに……」
テーブルに額を当てたまま、小さく震える声で呟き続けるキュルケ。
「もっと早く気付いていれば、何か変わっていたのかしら……」
力な
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