第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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「そうだ。タバサはミョズニルトンがルイズを誘拐する間、時間稼ぎのため俺と戦った」
シロウの言葉に、ルイズはテーブルを叩き立ち上がる。
「え? ちょ、シロウ。タバサと戦ったなんて聞いてないわよ!? えっ、もしかしてシロウの傷ってタバサにつけられたものなの!?」
「ん、いや、あれはまあ、俺の自業自得のようなものだが、いや、それは今は関係ない。今問題なのは、途中でミョズニルトンを裏切ってルイズの救出に力を貸してくれたとは言え、タバサがその誘拐に協力していたことだ」
「問題ないって……かなり深い傷だって聞いたわよ。ったくもう……はぁ……もういいわ。それで? キュルケ、あんたどうやら色々と知っているみたいだけど、それを教えてくれるのかしら?」
どかりと椅子に腰を下ろしたルイズから、『言わないと何するかわからないわよ』との鋭い視線を受けたキュルケは、何かを諦めたようにふっと溜め息を吐くと、向けられる視線から逃げるかのように背もたれに身体を預け天井を仰ぎ見た。
「そんな脅さなくてもちゃんと教えるわよ、っぁ〜……ったくあの子は……何でもう……本当に……」
天井を仰ぎ見る顔を両手で覆ったキュルケは、ポツリと呟く。
「ねぇ……あの子がガリア人だって知ってた」
「……噂でなら、だけど」
キュルケの顔を覆う両手の隙間から漏れる問いかけに、ルイズが小さな声で答えた。
その小さな答えを聞いたキュルケは、天井を見上げていた顔を下ろすと、ぐるりとテーブルを囲む全員を見回す。
「その噂は本当よ。あの子はガリア人。だけど、ただのガリア人じゃ……ただの貴族じゃないわ」
「……では、彼女は何者なのですか?」
アンリエッタが落ち着いた声音で問いかけると、キュルケは顔を横に、真っ直ぐに視線を向け。
アンリエッタを見つめる。
「彼女は……王族です。ガリアの王弟の……娘です」
「っ?!」
「う、うそ、タバサが王族だったなんて……」
キュルケの言葉に、アンリエッタとルイズの顔が驚愕に染まる。しかし、ただ一人士郎だけが、冷静さを保った顔でキュルケを見ていた。
「タバサが王族……か、だがキュルケ、そうだとしたらいくつか疑問があるんだが?」
「何?」
士郎の問いに、キュルケは顔を前に戻す。
「タバサが王族と言うが、なら何故タバサはこの学院にいるんだ? いくらトリステイン魔法学院が有名だとはいえ、王族が他国の学院に通うとは思えない」
「……一言で言えば厄介払いよ」
「厄介払い? それってどういう事よ?」
キュルケが顰めた顔を逸らし呟いた言葉に、ルイズが疑問の声を上げる。
「あの子の父親だけど、何で死んだか知ってる?」
「ガリアの王弟と言えば、オルレアン公シャルル様でしたか…
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