第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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、先程のメイドがあのメイドですか?」
「はい。あのメイドです」
アンリエッタの問いにルイズが答える。
笑いながら頷くルイズを見たアンリエッタは、シエスタの背中が消えた方向に視線を向けた後、背後に立つ士郎に顔を向け。
「可愛い子ですね」
ニッコリとイイ顔で笑った。
「それでは、そろそろ本題に入りましょうか」
カチャリとティーカップをテーブルの上に置いたアンリエッタが、顔を上げ口を開いた。視線の先には、ルイズ、キュルケ、そして士郎の姿がある。
女王の昼餐のため、ルイズの部屋に運び込まれた大きなテーブルには、窓を背にした場所を上座として、そこにアンリエッタ、その正面にルイズ、そして間にキュルケと士郎が座っていた。
「……昨夜のわたしの誘拐未遂について、ですか」
アンリエッタの正面に座るルイズが、チラリと隣に座る士郎を見る。
「犯人について何かわかったのでしょうか?」
「はい。と、言いたいのですが、実のところまだわたくしも詳しい話は聞いておりません」
ルイズの言葉に小さく頷いたアンリエッタが、首を横に動かす。アンリエッタの視線に導かれるように、テーブルを囲む他の二人の視線が移動する。テーブルを囲む三人の視線が向けられた士郎は、持ち上げていたティーカップを下ろすと、視線を下に向けたままギシリと椅子の背に身体を預けた。
「その前に、一つだけ確かめたいことがある」
顔を上げた士郎は、正面に座るキュルケを見る。キュルケを見る士郎の目と、声は、何時もよりも何処か硬い。その声と視線に、キュルケは自分がここに呼んだのが士郎だと確信する。
「あら、わたしに何か聞きたいことでもあるの?」
ざわつく心を誤魔化すように、キュルケはティーカップに手を伸ばす。
「……タバサのことだ」
「タバサ?」
士郎が口にした名前に、ティーカップに伸ばそうとしたキュルケの手が止まる。反射的に顔を上げ、士郎の顔を真正面から見てしまう。
「タバサは何者なんだ」
士郎と目が合った瞬間、キュルケは心の中で溜め息を吐いてしまう。
これは誤魔化すのは無理ね、と。
キュルケを見つめる士郎の目は、一切の誤魔化しも、嘘偽りも許さないと口にしていた。
何となくではあったが、予想はしていた。士郎がルイズの誘拐騒ぎで怪我をしたと聞いた時から……その怪我が氷の矢を背中に受けたことだと聞いた時から。
「……そっ、か。ま、薄々そうじゃないかと思ってはいたんだけどね」
「な、何よ、どういうことよ?」
突然の状況に、ルイズはキュルケに視線を向け訝しげに眉を顰める。
「この誘拐騒ぎに、タバサが関わっているってことよ」
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