第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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何度もぺこぺこと頭を下げるコルベールに対し、アンリエッタが笑って首を振る。そんなコルベールとアンリエッタの会話を遠目で見るルイズたちの中、シエスタがはぁっとため息を吐いた。
「はぁ、こんな近くでお顔を拝見できるなんて……やっぱり女王陛下は綺麗ですね」
「確かに……他の貴族と何処か違うわよね」
シエスタの目には、アンリエッタが笑う度に溢れる光が見えた。学院には様々な美しい貴族の子女がいるが、やはり王族であるアンリエッタは別格に感じる。流石はトリステインの花と呼ばれるだけはあるとシエスタは思わず溜め息を吐き、その隣でジェシカも同意するように頷く。
「そうですね。何よりも気品が違いますし」
「あら、それってわたしたちには気品がないってことかしら?」
「ふふふ……本っ当に―――いい度胸ね」
「あは、あはは、は……」
無意識に溢れたシエスタの言葉に、キュルケとルイズが笑みを浮かべた顔を近づける。ルイズたちの笑みに、シエスタは硬い乾いた笑みを返す。
ルイズたちの笑みの圧力に押されるように、今度はシエスタがじりじりと後ずさり始める。キョロキョロと視線を動かし、シエスタが逃げるタイミングを図っていると、
「あっ、シロウさん」
色濃い喜色が混じったカトレアの声に、その場にいた全員の視線が一斉に移動する。
カトレアの、ルイズたち全員の視線の先に、水精霊騎士隊のマントを纏い歩くシロウの姿があった。
アンリエッタを囲んでいた生徒たちが、現れた士郎に道を譲る。士郎の前に、アンリエッタへと続く道が開く。甲板に集まった全員の視線を受けながら、堂々とした姿でアンリエッタの元に向かう士郎。生徒たちが分かれて生まれた道を歩く士郎の前に護衛の騎士が立ち塞がろうとするが、それをアンリエッタが手を上げて制する。
「……シロウさん」
士郎とアンリエッタが向き合う。目と目がかちりと合い、頬を赤く染めたアンリエッタが顔を伏せる。
「「「「「え?」」」」」
ルイズを除く五人の口から驚愕の声が漏れた。
流石は恋をする女たちと言えばいいのか。四人は見てしまったのだ。顔を伏せる刹那に見えたアンリエッタの瞳。その中に自分たちと同じような熱が灯っていたことに。
「ど、どういうことかしら」
「る、ルイズま、まさかとは思うけど」
「あは、あはは……嘘でしょ」
「まあまあ驚きましたわね」
「いえ、あの、はは、え? うそ? まさか?」
ギリギリと錆び付いた機械仕掛けの人形の様にルイズに顔を向ける四人。ただ一人、カトレアだけは頬に手を当て微笑ましげにアンリエッタと士郎の二人を見つめていた。
刺すような四つの視線を向けられたルイズと言えば、ぶすっと見るからに機嫌の悪そうな顔を士郎に向けている
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