第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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く呟かれた言葉は、今にも消えてしまいそうなほど小さく弱々しかった。
「さて、な。変わっていたかもしれないし変わっていなかったかもしれない。そんなことは終わった今考えても仕方がない。今言えるのは、これからどうするかと言うことだ。キュルケは……どうする?」
「……わたしは……」
腕を組み、背もたれに深く腰掛けた士郎が、視線だけをキュルケに向ける。士郎の視線を受けたキュルケは、テーブルに額を当てたまま深く大きく息を吸うと、
「はぁ〜……まぁ、まずは一言文句を言ってやりたいわね」
大きなため息と共にボソリと呟いた。
「文句?」
「そ、文句よ文句……あの意地っ張りに……ね」
ルイズの疑問に、キュルケは頭を掻きながら顔を上げる。その口元に苦笑を浮かべながら、キュルケはルイズに顔を向けた。
「でもまあ、それにはまず本人に会わないといけないんだけど、ね」
「手がかりがない今は、タバサからの連絡を待つか、何か手がかりを掴むまでは動けない、な」
目を細め窓の向こうに視線を向けるキュルケ。士郎はキュルケの言葉に頷くと、同じように視線を窓の向こうに向けた。
「……ま、確かに今は待つしかないわね」
チラリと士郎に視線を向けたキュルケは、小さく顎を引いて同意を示す。
キュルケは「待つしかない」と言ったが、姿を消したタバサからの連絡が来る可能性は低いだろうと、この部屋にいる者たちは考えていた。ミョズニルトンの裏にガリアという大国がいるとすれば、いくら腕が立つとは言え、メイジ一人が何とか出来るわけがない。自分一人で何もかも背負い込むタイプのタバサならば、学院に迷惑がかからないように、このまま黙っていなくなってしまう可能性は高いと、この場にいる全員が考えていた。
もしかしたら、このままタバサと会えないかもしれない……嫌な予感が少女たちの胸を過ぎる。
「っ……ぇ、ねえ、さっきから気になってたんだけど」
言葉が切れ、静まり返った部屋の中、沈鬱な雰囲気が満ち始めた部屋の空気を変えようとでも思ったのか、少し焦った調子で、ルイズが疑問の声を上げた。
「何よ?」
「『タバサ』って言う名前が偽名なら、本当の名前って何ていうの?」
ルイズの疑問の声に、キュルケが少し青ざめた顔を上げる。キュルケに見つめられたルイズは、顎に人差し指を当て小首を傾げると、タバサの本当の名前について問いただす。
「タバサの本当の名前? それは―――」
ルイズの質問に何気なく答えようとしたキュルケだったが、
「―――キュルケ」
疑問の答えは、するりと滑り込むように響いた士郎の制止の声によって遮られた。
「そういうのは、な―――」
うんっと背筋を伸ばしながら背もたれから背中を
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