第十章 イーヴァルディの勇者
第一話 少女の名前
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ら」
ぷぅっと頬を膨らませるルイズ。
「そうなの? でもあなた、陛下に事の詳細を説明しに行ってたんでしょ?」
「うっ……そ、そうなんだけど」
びくりと身体を震わせたルイズの様子に、キュルケは眉をひそめる。
「……何か隠してないあなた」
「な、何もか、隠してなんかい、いないわよ」
「嘘ね」
「う、嘘じゃないわよっ!」
背けていた顔を戻しキュルケを睨み付けるルイズ。
う〜と唸りながら睨み付けるルイズを、キュルケは腕組みして見下ろす。
「いえ、絶対に嘘ついているわね」
「だからう―――」
「嘘ですね」
「わかり易す過ぎなのよあなた」
「嘘はダメよルイズ」
「いや〜バレバレでしょ。嘘下手ねルイズって」
「って、何時のまにッ?!」
ルイズを囲むように、何時の間にかシエスタ、ジェシカ、カトレア、ロングビルの姿があった。
咄嗟に逃げようとするルイズだったが、逃げる先にジェシカとロングビルが先回りする。
「っく!」
「ふふんっ、逃げられると思っているの?」
「さあって、きりきり話してもらいましょうか」
わきわきと手を閉じたり開いたりして迫るジェシカたちの姿に、怯えたようにジリッと後ずさるルイズ。
「は、話せるわけないでしょっ!」
「むふふ、やっぱり何かあるってわけね」
「にょほほ、その硬いお口を開かせてもらいましょうかにゃ」
「くぅぅぅ〜」
ぎりぎりと歯を鳴らし、追い詰められた猫のようにルイズが威嚇するように髪を逆立てる。そんなルイズに対し、ジェシカたちはじりじりと距離を縮めていく。気付かれないように、ルイズはゆっくりと足に縛りつけた杖に手を伸ばす。
緊迫の一瞬。
ジェシカたちの足に力が入り、ルイズの指先に杖が触れる。
―――瞬間。
「あら? あの方ってもしかして……アンリエッタ陛下?」
ポツリと呟かれたカトレアの言葉に、ピタリと動きが止まる。カトレアの言葉にルイズたちが顔を上げ、視線が同時に動く。視線の先には、護衛を引き連れたアンリエッタの姿があった。アンリエッタは生徒たちに船の説明をしていたコルベールに向かって歩いていく。
甲板の上にいる生徒たちから、アンリエッタの来訪に対する歓声が上がる。生徒たちに囲まれたコルベールが、慌てて頭を下げたため、前に立っていた生徒の頭とぶつかってしまう。
生徒と一緒に頭を抑えて甲板を転がるコルベールの姿に、アンリエッタの足が一瞬止まる。しかし直ぐに微笑みを浮かべながら、未だ甲板を転がるコルベールに向かって歩き出す。笑みは引きつっていたが。
「だ、大丈夫ですか?」
「は、はい。し、失礼しました」
何とか立ち上がったコルベールであったが、その広すぎる額は真っ赤に染まっていた。
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