第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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いる」
「で、でも……」
「でも、なんだい?」
「わ、わたし……まだ……」
「もう子供じゃない。キミは十六だ。自分の事は自分で決められる年齢だし、父上だって許してくださってる」
ワルドはそこで言葉を切った。それから、再び顔を上げると、ルイズに顔を近づけた。
「ワルド……」
ルイズは思い出す。頭に浮かぶのは自分の使い魔である士郎のこと……。そして、ついこの前に見た、奇妙な夢……。
―――っ……シロウ……わたしは……。
ワルドと結婚しても、自分は士郎を使い魔としてそばに置いておけるのか。ルイズは思い悩む。
あの夢をみてから、ルイズはいつも士郎のことばかり考えていた。だから、わかる、理由なんてないけれど、士郎を一人にしたら駄目だということが。
だからルイズは顔を上げると、決意した目でワルドを見て言った。
「ワルド。わたしはあなたと結婚できないわ」
ワルドは驚きに目を見開くと、ルイズの顔をまじまじと見て、嘘ではないということを理解した。
「キミの心の中には、誰かが住み始めたみたいだね」
「ちっ、違うっ! そっ、そういう理由じゃなくて!」
ルイズは顔を真っ赤にさせて立ち上がると首を左右に振って否定する。
「いいさ、僕にはわかる。わかった、取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でもね、この旅がおわったら、きみの気持ちは僕に傾くはずさ」
ルイズは俯いて何も言わない。
「それじゃあ、もう寝よう。本当はこの部屋で一緒に寝るはずだったんだけどね……残念ながらここからでなければいけない。それじゃ、おやすみルイズ」
そう言ってワルドは部屋のドアから出て行った。
一人残されたルイズは胸に手を当てると、口の中で小さく呟く。
「私の心にシロウが住み始めた……か……」
“女神の杵”亭の屋根に―――一つの人影があった。
士郎である。士郎は腕を組み、その鷹のような眼光を周囲に巡らして警戒している。
唐突に士郎が上を見上げると、空から風竜に乗ったタバサとキュルケが現れた。
「お疲れ様。どう? 何かあった?」
「キュルケか、いや何もない……」
「ふ〜ん、そう?」
キュルケは士郎に近づくと、後ろから抱きついてきた。
「キュルケ」
「心配じゃないの?」
士郎がキュルケに何かを言おうとする前に、キュルケは士郎の耳元で囁く。
「ルイズがか?」
「そっ、いくら婚約者だからって、今は二人っきりよ。心配じゃないの?」
「心配じゃないかと聞かれれば、それは心配だが……」
「じゃあ、なんでこんなところにいるの? 心配なら……」
「確かに心配だが、さっきから嫌な予感がする」
「嫌な予感?」
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