第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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笑いながら言った。
「先ほどからチラチラ見ているが、そんなに気になるのかい? 気になっているのはグラモン元帥のご子息かい、それともあの使い……」
「ちっ、違っ……!」
ルイズが顔を上げて否定をしようとすると、風竜の上からキュルケの声がする。
「あんっ。風が寒いわシロウ。あっためて」
「こら〜!! キュルケッ! あんた何してんのよ! シロウから離れなさいっ!」
「る、ルイズ……」
グリフォンの背から落ちかけるほどに身を乗り出して文句を言うルイズの姿に、ワルドが戸惑った声を上げる。
「は、ハハッ。やっぱり彼が恋人じゃないのかい?」
「も、もうっ! こ、恋人なんかじゃないったらっ」
風竜とグリフォンで移動したことから、士郎たちはその日の夜までにラ・ロシェールの入口についた。
士郎は訝しげな顔をして辺りを見回した。湊町だというのに、周りは山道しかない。
どういうことかと頭をひねりながら月夜に浮かぶ、険しい岩山の中を縫うようにして進むと、峡谷に挟まれるようにして街が見えた。街道沿いに、岩をうがって造られた建物が並んでいる。
「周りは山ばかりなんだが、何故港町なんだ?」
士郎がそう聞くと、ギーシュが呆れたように言った。
「きみはアルビオンを知らないのかい?」
「ああ」
「まさか!」
ギーシュは笑ったが、士郎は肩を竦めた。
「俺は随分と遠くから来たみたいでな」
「ふ〜ん。ま、このペースならあと少しで着くから、そうしたら直ぐにわかると思うよ……ああ、ほら、言ってる傍から街の灯りが見えてきた」
ギーシュがそう言って指を指し示すと、そこには両脇を峡谷で挟まれた、ラ・ロシェールの街の灯りが怪しく輝いていた。
ラ・ロシェールで一番上等な宿である“女神の杵”亭に泊まることにした一行は、一階の酒場でくつろいでいた。
“女神の杵”亭は、貴族を相手にするだけあって、豪華なつくりである。テーブル床と同じ一枚岩からの削り出しで、顔が映るぐらいにピカピカに磨き上げられていた。
そこに、“桟橋”へ乗船の交渉に行っていたワルドが帰ってくる。
ワルドは席につくと、困ったように言った。
「アルビオンに渡る船は、明後日にならないと出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに……」
ルイズは口を尖らせている。
「あたしはアルビオンに行ったことないからわかんないけど、どうして明日は船が出ないの?」
キュルケの方を向いてワルドが答える。
「明日の夜は月が重なるだろう? “スヴェル”の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく」
「どういうことだ?」
士郎が訳が分からないと言うように尋ねると、ワル
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