第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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思い出し、彼の唇の感触が残る手を撫でながら目をつむる。
その口元には、本人も気付かない程の小さな笑の姿があった。
港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること早馬で二日、アルビオンへの玄関口である。港町でありながら、狭い峡谷の間の山道に設けられた小さな街である。
人口はおよそ三百ほどだが、アルビオンと行き来する人々で、常に十倍以上の人間が街を闊歩している。
狭い山道を挟みこむようにしてそそり立つ崖の一枚岩をうがって、旅籠やら商店が並んでいた。立派な建物の形をしているが、並ぶ建物の一軒一軒が、同じ岩から削り出されたものであることが近づくとわかる。『土』系統のスクウェアメイジたちの巧みの技であった。
峡谷に挟まれた街なので、昼間でも薄暗い。狭い裏通りの奥深く、さらに狭い路地裏の一角に、はね扉のついた居酒屋があった。
酒樽の形をした看板には『金の酒樽亭』と書かれている。その居酒屋は今、内戦状態のアルビオンから帰ってきた傭兵たちで店は溢れかえっていた。
店内は喧騒で溢れていると思いきや、意外なことに静かであった。
その理由は、店内にいる白い仮面を被った男であった。店内にいる傭兵達は、白い仮面の男の周りで男の話を聞いている。
「で、その六人組みのヤツらを襲えばいいんだな」
「ああ、その通りだ。襲う日時場所はあとで伝える」
白い仮面の男は、依頼内容を伝え終わると傭兵たちを見回した。
「ところで貴様ら、アルビオンの王党派に雇われてたのか?」
傭兵たちはうすら笑いを浮かべて答えた。
「先月まではな」
「ま、とは言え負けるようなやつぁ、主人じゃねえからな」
傭兵たちは笑った。白い仮面の男も笑った。
「金は言い値を払う。だが、俺はこの国の王のように甘っちょろい王様じゃない。逃げたばらば―――殺す」
魔法学院を出発して以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしであった。士郎たちは途中で二回馬を交換したが、ワルドのグリフォンは疲れを見せずに走り続けている。
そのことからタバサの提案により、先ほどから士郎、タバサ、キュルケ、ギーシュの四人は、タバサの使い魔である風竜の背に乗って移動している。よって、今は地上では無く空を飛んで移動していた。
「このままのペースなら、予定より早く着きそうね」
抱かれるような格好で、ワルドの前に跨ったルイズが言った。雑談を交わす内に、ワルドの頼みにより、ルイズのしゃべり方は昔の丁寧な言い方から、今の口調に変わっていた。
「そうだね、ラ・ロシェールの港町まで夜にはつきそうだ」
「そう……ね……」
ルイズはワルドと話しながらも、チラチラと士郎達が乗る風竜を見ていた。
それを見たワルドは
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