第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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よ。中庭に練兵場があるんだ」
士郎とワルドははかつて貴族たちが集まり、陛下の閲兵を受けたという練兵場で、二十歩ほど離れて向かい合った。練兵場は、今まではただの物置き場となっている。樽や空き箱が積まれ、かつての栄華を懐かしむかのように、石でできた旗立て台が苔むして立っている。
「昔……といっても君にはわからんだろうが、かのフィリップ三世の治下では、ここでよく貴族が決闘をしたものさ」
「そのようだな……」
そう言えば時計塔にも、似たようなものがあったな……あいつらは決闘場を使う前に喧嘩を始めていたが……。
士郎は決闘場を見回すと、昔を思い出し目を細めた。
「古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代……貴族が貴族らしかった時代……名誉と誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあった。でも、実際はくだらないことで杖を抜きあったものさ。そう、例えば女を取り合ったりね」
「そういうところは、昔も今も変わらないということか」
一瞬だけ苦笑を浮かべデルフリンガーを引き抜こうとした士郎だが、それをワルドは左手で制した。
「何だ?」
「立会いには、それなりの作法というものがある。介添え人がいなくてはね」
「介添え人?」
「安心したまえ。もう、呼んである」
ワルドがそう言うと、物陰からルイズたちが現れた。ルイズは二人を見ると、はっとした顔になる。
「ワルド、来いって言うから来てみれば何をする気なの?」
「あらルイズ。見て分からないの? 決闘よ決闘」
「シロウとワルド子爵の決闘か、どっちが勝つかな?」
「……」
ルイズの後ろからぞろぞろとついてきたキュルケたちを見たワルドが、困惑した顔でルイズに聞く。
「ルイズ、彼女たちは?」
「ここに来る途中で会ったの……」
ルイズが顔を横に向けて言うと、ワルドに近づく。
「というかそれよりもワルドっ! 決闘ってなによっ決闘ってッ! 今はそんなことしている時じゃないでしょ!?」
「そうだね。でも、貴族というヤツは厄介でね。強いか弱いか、それが気になると、もうどうにもならなくなるのさ」
言っても聞かないと理解したルイズが、おずおずと士郎を見た。
「……どうしてもやるの?」
士郎は苦笑いしながら、ルイズの頭の上に手を置く。
「すまないなルイズ。まあ、そういうことだ」
「もう……怪我しないでね」
「では、余計な者たちもついてきたが、介添え人もきたことだし、始めるか」
ワルドは腰から杖を引き抜き、フェンシングの構えのように、それを前方に突き出す。
「さて、どのくらいの腕前か見せてもらおうか」
ニヤリとした士郎の笑みに、ワルドが薄く笑い答えた。
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